数年に一度、『現象』と呼ぶべき人に出会うことがある。
現象とは「自然界や人間界に形として現れるもの」という意味で、通常は人に対して使われる表現ではない。
「オーラがある」とはよく使われるけれど、オーラ以上の世界観が生まれていて、その人を中心として様々なアクションやハプニングが起こっているとき『この人は、人というより、もはや現象と呼ぶべきだ』と、僕は思う。
直近、僕の中で『人』から『現象』になった女性、それがマドカ・ジャスミンである。
ここMTRLでも度々波乱を起こしている弱冠22歳のライターについて、鈴掛真が一つひとつ紐解いていこうと思う。
彼女のライターデビューは、2016年3月に発表されたWEB記事『「ブス!!!」と炎上したので、美容整形外科に行ってみた』である。
無国籍で不思議な響きのライターネームと、初っ端からクリックさせる気満々なパンチのあるタイトルを引っ提げて、マドカ・ジャスミンは爆誕した。
このとき、まだ20歳。
それから、新宿駅前で「わたしに下着を買って下さい」と群集に呼びかけたり、渋谷のスクランブル交差点にスクール水着で出没したりと、文字通り人目をはばからない体当たり企画を連発。
猪突猛進な活動はテレビ制作者の目にも留まり、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、AbemaTVに相次いで出演。
今年、KADOKAWAから初の書籍『Who am I ?』を出版するに至った。
ここまで、たった2年間での華麗なる飛躍である。
スク水から、逆ナン、TENGA社突撃レポート、ひいてはセックス、出張ホスト、そしてクラミジア感染の暴露まで……この2年間、マドカ・ジャスミンは放送コードぎりぎりのフルコースを邁進してきた。
一体、何が彼女をそうまでさせ、世間は彼女に何を期待しているのだろうか。
僕が彼女に出逢ったのは、2016年のMTRL忘年会でのこと。
既に記事をいくつか読んでいたので「あ! スク水の子だ!!」と、芸能人を見かけたように感激したのを覚えている。
そのときのマドジャスは、銀髪にパンツルック、どこから湧き出るのかハタチそこそことは思えない貫禄で、“ボーイッシュでかっこいい女の子”という印象だった。
平均年齢の低すぎる飲み会に緊張していたこともあり、僕は10も年下の女の子を前にして、恥ずかしながらちょっとした挨拶くらいしか交わせなかったのだけど。
その後の活躍を画面越しに拝見、拝読しているうちに、とある彼女の変化に着目した。
「え、マドジャス、めっちゃきれいになっとるやんか」
元来、女性のメイクやファッションは年齢とともに洗練されていくものだが、彼女の場合は、この1年SNSで見かけるたびに毎月、いや毎週のように見る見る女性らしく、美しく変貌したのである。
テレビ出演の機会が続いたためか、美に対して相当な努力と資金を費やしたのだろうと想像できた。
次々にリリースされる体当たり企画も相まって、僕の中でマドジャスへの期待値は日に日に高まっていったのである。「コイツは只者じゃないな」と。
「この子、凄い」と思ったきっかけを、もう一つ。
これまで彼女が取り組んできた企画の毛色から、どうしてもアンチを生み出しやすい傾向にある。アンチの数は人気のバロメーターでもあるわけだが、Twitterを覗けば、彼女に対する辛辣なコメントは少なくない。
ところが彼女は、あろうことか自分に向けられた誹謗中傷のほとんどを公にリツイートしているのである。
僕なんか、悪口ひとつで一日寝込んでしまいそうなものなのに。しかも、ビリビリにやぶって燃やしたくなりそうな悪評を、自分のファンに向けて拡散している潔さ。どんな評価も真摯に受け止め、また一意専心するメンタルの強さ。
「その両方を弱冠22歳の女の子が持っているなんて!」と度肝を抜かれたのである。
さて、肝心なライターとしての彼女の文章はというと、まだ荒っぽさが残る印象なのが正直なところ。
エンタメ記事から社会派エッセイまで、既に様々な文体に挑戦している中、どれもペンを握る握力が強すぎるというか、今後もう少し肩の力を抜いて書くことでさらに洗練されていくだろう、と感じた。
その荒々しさもまた、今この瞬間の若さゆえの魅力なのだけど。
文章・文体もさることながら、マドカ・ジャスミンから学ぶべきもの、それは彼女の『行動力』だと、僕は断言したい。
スク水も、逆ナンも、出張ホストも、企画を立てるのは簡単である。
しかし、実際に決行し、体験し、レポートを執筆し、顔と名前を露わにして公表するのは、並大抵のことではない。
いささか傍若無人と誤解されるため、「わざと炎上を狙ってる」「売名行為だ」などと揶揄されているのを、本人のリツイートで目にしたことがある。
いやいや、不祥事での炎上ならまだしも、多数の読者の関心を集めるテーマを取り上げ、良くも悪くも物議を醸す記事が書けている時点で、有能なライターに他ならないだろう、と僕は思う。炎上はあくまでその副産物である。
僕も以前、ここMTRLで『ジャニーズの次世代エース!Sexy Zone佐藤勝利に今こそ注目すべき理由』を執筆し、自身最大のアクセス数を叩き出したが、「勝利くんをネタにした売名行為にしか思えない」というジャニヲタさんからの意見をTwitterで目にした。
はて、パン屋がパンを作るのは、売名行為だろうか。
パン屋は、美味しいパンをたくさんの人に食べて欲しいから、パンを作る。
作家やライターは、たくさんの人に伝えたいことがあるから、言葉を書くのである。 売名もまた、その過程の副産物に他ならない。
どうしたら記事をたくさんの人に読んでもらえるか。できるだけたくさんの人に自分の想いを伝えられるための工夫に、我々は何時間も何日もかけて、記事を書き上げている。
その途方も無い努力を「売名行為」という安直な言葉で片付けるのがいかに失礼か、そろそろ気づいていただきたいものである。
話を戻そう。
現在の二十歳前後、マドカ・ジャスミン世代を広く観察しても、やはり彼女の行動力は突出しているといえるだろう。
僕は毎年、企業に新卒として入社する世代と交流する機会があるのだが、彼らに対して例年感じているのが、『自発的に考え行動する能力の欠如』である。
10年前に新卒だった僕の世代と比較すると、今の世代はどの子も成績優秀で、礼儀正しく、不良が少ないことに驚かされる。それは大いに結構なのだが、学校のような“課題を与えられる受動的環境”ではパフォーマンスを発揮できるのに、いざ企業に入って“自ら課題を見つけて取り組む能動的環境”に置かれた途端、活躍できなくなってしまう子を何人も見てきた。
行動する能力がない、というより『行動する方法を知らない』というべきか。その原因が、この10年で変化した日本の教育方針にあるのだとしたら、なんとも不憫である。
特に、マドジャス・ジェネレーションは、初めて持った携帯電話がスマートフォンだった世代。
あらゆるカルチャーから、他者とのコミュニケーションにいたるまで、すべてスマホで完結することに慣れた彼らは、『バーチャルで済むのならリアルは無用』と捉えているように見受けられる。
スマートフォンで見た・聞いただけで、知った気・やった気になっている子が多い中で、バーチャルを飛び出し、現実の渋谷にスク水で現れたマドカ・ジャスミンは、もはやバケモノである。(ほめてる)
彼女の存在、体当たり企画、そして炎上にいたるまでを、『マドカ・ジャスミンという現象』として、我々は目に焼き付けるべきであると、僕は思ってやまない。
次はどんな現象を見せてくれるのか、今後も彼女の動向に注目しよう。
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