叶わなかった初恋が教えてくれたこと。連載「ゲイだけど質問ある？」鈴掛真

20 September 2017 （更新日: 15 December 2017）

いつの日か
誰かと結ばれ
たとしても
あなたのことは
ずっと好きです

こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。

前回は、僕が幼少期にゲイを自覚したエピソードをご紹介しました。
今回は、実際に男性でありながら初めて男性に恋をした体験をお話ししましょう！

というわけで、連載【ゲイだけど質問ある？】せつなさ増量でお届けします！

男子が初めて男子に恋をした瞬間

僕の初恋は、忘れもしない、中学１年の春。

入学したばかりの中学校にまだ慣れなくて、毎日そわそわと過ごしていた頃。
ある日、校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下で、一人の男子生徒とすれ違いました。

背が高くて、中学生とは思えない大人びた体格と、少し日本人離れした顔立ち。
その瞬間、それまで感じたことのない想いが体中を駆け巡りました。
『あのかっこいい人は誰なんだろう？　彼のことを知りたい！』

僕にとって、一目惚れの初恋でした。

後日、てっきり先輩だと思っていたのに、彼は同級生だということが発覚。
けれど６クラスあるうち、僕は１組で、彼は６組。しかも、彼は野球部のピッチャーで、演劇部だった僕とは、同級生ということ以外まったく接点がありませんでした。

当時まだ成長期前で、身長が140cmしかなかった僕には、彼がとても大人に見えたし、「あんなふうにかっこよくなりたい」と思う憧れの対象でもありました。
『彼と仲良くなりたい！　僕のことも知ってほしい！』

けれどしばらくは、朝の全校集会や、放課後のグラウンドで、彼の姿を遠くから探すことしか僕にはできませんでした。

転機は、秋の文化祭でやってきました。
演劇部が全校生徒の前で上映した劇で、僕の演技が学校中に絶賛されたのです！
上映後、僕が廊下を歩くと、一度も話したことがない別のクラスの生徒たちまでもが「演技、良かったよ！」とハイタッチしてくれました。
その中の一人に、彼がいたのです。

「え……今、話しかけてくれた！」
突然のことで、僕は返事をすることもできませんでした。それでも、彼が確かに僕のことを知ってくれた、それが本当に嬉しかったことを今でも覚えています。

それからは、野球部の友人を交えたり、勇気を出して自分から話しかけたりして、なんとか彼との距離を縮めようと努めました。
その間に、僕は身長が20cm以上も伸びて、ファッション雑誌を読んだり、繁華街に一人で出かけてみたり、どうしたらかっこいい男性になれるのか自分なりに研究したりしていました。

彼が、クールな外見とは裏腹に、実は野球のことしか頭にない素朴な少年だったこともあって、僕らの仲は２年間かけて確実に深まっていきました。

気づけば、中学３年生。僕らは、週末を二人きりで過ごすまでの仲になっていました。日曜日、彼がトレーニングでランニングするところを僕が自転車で追いかけたり、公園でキャッチボールをしたり。遠い憧れだった彼は、いつしか手が届くほど近くにいました。

中学１年生、一目惚れから始まった初恋の相手と自分。２年経った頃には週末は一緒に遊ぶまでの仲に。野球部の彼のランニングに自転車で付き合ったのはキラキラした思い出。

けれど、仲良くなってしまったから、近くにいてしまったからこそ、つらいこともあります。彼から、片思いしている女の子の相談をされるようになりました。

決して叶わない恋だとわかっていたけれど、彼の近くにいられたら、それだけで幸せだと思っていたけれど、やっぱりそれだけじゃ嫌だという想いが、僕の中に芽生えてしまったのです。

「人を好きになるのって、こんなに苦しいことなんだ」

僕と彼の友情は、高校に入学した後もしばらく続きましたが、僕は彼と向き合うことから少しずつ目を背けるようになりました。

そうして、僕の初恋は、始まるとも、終わるともなく、静かに幕を閉じたのでした。

いかがでしたか？
きっとみんなにも、それぞれの初恋があったはず。
それは幸せな恋だった？　つらい恋だった？

僕がみんなに知って欲しいのは、たとえ同性に対してだったとしても、人を好きになる気持ちに変わりはないっていうことなんだ。
そして、それが幸せな恋でも、つらい恋でも、その人を好きになれたことが、なにより大切なことなんじゃないかな。

今は、どこで誰と住んでいるかも解らない彼だけど、きっと幸せに暮らしていますように。

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■プロフィール

鈴掛真（すずかけしん）
歌人。セオリーは「ポップスとしての短歌」。
著書に『好きと言えたらよかったのに。』（大和出版刊）がある。
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