こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。
10代のみんなにはまだ遠い話かもしれないけど、20代になればやがて意識せずにはいられなくなるもの、それが『結婚』。
ほとんどの人は「恋愛の先に結婚がある」と考えているはず。けれど世の中を見ていると、どうやらそうじゃないこともあるみたい! 一体どういうことなのか。
というわけで、連載【ゲイだけど質問ある?】今回は「結婚とは何なのか」をマジメに考えてみよう!
そもそも僕がこんなことを考えるようになったのは、何を隠そう僕はゲイで、恋愛対象が同性である以上、結婚することができないから。
世界的に見れば、同性婚を認める国が増えてきたり、国内でも同性婚に相当するパートナーシップ制度を導入する地域が増えてきているけれど、まだまだ男女のようにいつでもどこでも結婚できるわけではないのは、みんなもご存知の通り。
そんなわけで僕は、自分が結婚できないからこそ、身の回りの男女の結婚事情を客観的かつ冷静に分析するようになったわけです。そして「結婚とはそもそも何なのだろうか」と、常日頃考えるようになりました。
まず僕が気付いたのは、結婚には大きく分けて2種類のパターンがあるということ。
ひとつは、恋愛の延長で結婚するパターン。
誰だって、同じ屋根の下で異性と暮らすなら、願わくばドキドキするような恋愛の相手といっしょにいたいよね!
けれど、僕の身の回りで結婚したカップルのその後を観察して平均化してみると、なんと恋愛の延長で結婚したカップルの離婚する確率が高いことに気づいてしまったんです!
これは一体どういうこと!?
僕はこの謎を解明すべく、恋愛の延長で結婚した相手と離婚した人たちに、離婚に至った理由を聞いてみました。
A子(27歳)「彼より私の方が仕事の収入が多くて、男としての魅力を感じなくなったの。別れても、20代の今ならまだ他の男探せるかな、って」
B太郎(32歳)「彼女は子どもが欲しいって思ってたみたいだけど、俺は別にいらなかったから。ってか子ども、好きじゃないし」
C子(38歳)「毎日顔を合わせるうちに愛情が失くなって、離婚直前はとにかく憎らしさしか感じなかった!」
えーっと、確認だけど、ちゃんと好きだった恋人と結婚したんだよね!?
とても愛し合っていたとは思えない冷めっぷり。
A子(27歳)「学生時代から付き合ってたから、まあ単純にそろそろかな、と」
B太郎(32歳)「なんとなく。彼女からの結婚したいアピールがウザくて」
C子(38歳)「結婚するまでは普通にラブラブだったし、30代のうちに結婚したかったから。結局30代のうちに離婚までしたんだけど!」
そう、つまり3人とも、結婚が恋愛の延長『でしかなかった』のです。子どもができたりとか、ぶっちゃけ金持ちと結婚して遊んで暮らしたいとか、結婚における明確な目的があるわけではなかったから、結婚生活を続ける理由も無かった、と。
社会では、結婚していないと負け組や売れ残りとして見られてしまいがち。そのためか、「どうして結婚したいか」ではなくて「とりあえず結婚したい!」と思っている人が多いように見受けられます。結婚することそのものが目的になってしまって、結婚後について具体的に考えていない人が多いように、僕は思えてならないんです。
そんなふうに結婚したなら、いつか離婚するのは当然じゃない?
では、恋愛の延長じゃないとしたら、他にどんな結婚があるのか。それが、結婚を大きく2種類に分けたもうひとつ、恋愛対象ではない相手と結婚するパターンです!
これまたどういうことなのか、その具体例をご紹介しましょう。
僕は、作家の中村うさぎさんにとても良くしてもらっていて、先日トークショーの対談ゲストとしてお招きしたとき、結婚についての見解をお伺いしました。うさぎさん曰く「恋愛と結婚は別物」なんだとか。
というのも、実は中村うさぎさん、男性との結婚・離婚を経た後、なんとゲイの男性と結婚。お互い恋愛対象じゃないにもかかわらず、今も尚20年以上もゲイ男性と幸せな結婚生活を送っているんです!
二人の間に恋愛感情やセックスは無く、お互いの恋愛には干渉しないようにしているようで、親友とも兄弟とも違う、まさに夫婦として特別な絆で結ばれているんだとか。
恋愛対象じゃない、しかもゲイと結婚するなんて、普通は理解しがたいと思うけれど、中村うさぎさんは著書の中で、このように書かれています。
『結婚とは、家族をつくることである』
とてもシンプルな言葉だけど、これこそまさに、みんなが見失いがちなもの。そして『結婚とは何か、の答えである』と、僕は確信しました。
親は自分よりも先に死んでしまうし、兄弟もそれぞれに家庭を築いていきます。ともすれば、結婚したり、子どもをもうけたりしない限り、家族はどんどん減っていって、やがて孤独の一途を辿ることに。そんな孤独を避けるため、血の繋がっていない他人と家族になれる方法が結婚であるわけです。
もちろん、大好きな恋人と結婚して末長く添い遂げられたら素敵なんだけど、恋愛感情には嫉妬が付きまとうし、出会いをピークとして年月が経つごとに熱量は下がってくるもの。
中村うさぎさんのように、お互いに恋愛を干渉しない親友同士と結婚できたとしたら、金銭面や健康面などあらゆる側面でサポートし合える『人生の協力者としての家族』をもうけることができるのではないか、と思うのです。
逆に言えば『結婚することによって、嫌が応にも家族が増える』ということでもあります。他人だった相手といっしょに住むということは、当然それまでの独身生活とは暮らしの形ががらりと変わるはずだし、それまで好きだった相手の嫌な部分が見えてきてしまうのも必然。それに耐えられないような人は、はじめから結婚なんかしなくていいんじゃない?
負け組や売れ残りになりたくないから、ではなくて、「本当に自分はこの人と家族になりたいのか」を考えて結婚するべきではないだろうか、と僕は考えます。
これから恋愛や結婚を経験していく10代・20代のみんなは、「恋愛の延長で結婚しちゃダメ」とは言わないまでも、恋愛のゴールに結婚があるように思わない方が良いと、僕は思います。
長い人生の中では、結婚後に過ごす年月の方が長いわけだから、結婚は到達点ではなく、通過点。
もしも恋人との結婚を考えるようなチャンスがあったときは、「この人と家族になったらどんな生活になるか」を具体的に考えてみると良いかもしれないね。
そして、僕も中村うさぎさんご夫妻のように「人生の協力者として女性の友人と結婚するのもアリかな」なんて考えている今日この頃。誰か僕と結婚したい女性、いる?
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