【ゲイだけど質問ある？】卒業、そして別れ…ノンケへの切ない片思い：完結編

30 March 2018

立ち上がる
ことのできない
老人に
なっても同じ
呼び名でいよう

こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。

【ゲイだけど質問ある？】叶わないとわかってたのに…ゲイの片思いがせつなすぎる

春は出逢いと別れの季節。
この３月で学校を卒業して新生活を迎えるみんなにとっては、期待や不安、いろんな感情が湧き上がる頃だね。

僕が大学を卒業したのはもう10年も前になるけれど、何年経っても決して忘れることのない別れがありました。
これまでの連載の中でお届けしてきた、同級生の男子への片思い。それから、恋を終わらせることを決心した瞬間。そして迎えた卒業。今度こそ本当にお別れのとき。

というわけで、連載【ゲイだけど質問ある？】今回はノンケへの片思い完結編をお届けします！

もう会えない彼に捧げる最後の想い

夏の日の空はただただ遠く青くて綺麗だ。

大学２年生の最後の日、僕が彼への片思いを断ち切ることにした瞬間から、春休みを経て３年生になってからの１年間、僕は彼とほとんど会話を交わしませんでした。

別々のゼミに入って、受講する科目やカリキュラムが違ってくると、昼休みや下校なんかも、ゼミの仲間と行動を共にするようになります。
そうして彼と顔を合わす時間が減ったのは、僕にとって自分を見つめ直すとても良い機会でした。
もしもそれまでと変わらず、同じ教室で長い時間をいっしょに過ごさなければいけなかったとしたら、僕は彼とどんな言葉を交わせばいいのかわからずに、つらい毎日を過ごしていたと思うから。

大学３年生といえば、専門科目が増えたり、就職活動が始まったりして、将来のことを具体的に考え始める頃。
僕が「文章を書く仕事がしたい」と思い始めたのもこの頃だったように思います。
来る日も来る日も彼のことばかり考えていた僕だけど、自分自身のことや周りの社会にしっかりと目を向けるようになりました。
そして、大学時代唯一の恋人ができたのもこの頃。相手は10歳年上の画家の男性でした。
結局は３年生が終わる頃に別れてしまったんだけどね。

そうして迎えた４年生で、僕らは同じゼミになったのでした。

僕しか知らない、卒業写真の秘密…

４年生は必須科目が少なく、週に何日かしか通学しなかったのだけど、奇しくも同じゼミになったことで、また彼と顔を合わせることに。

「真ちゃん、昼ご飯食べに行こうよ」

そんなふうに声を掛けてきたのは、１年前とまったく変わらない彼でした。
どんなに会話を交わさない日々があっても、彼が変わらないままでいてくれた。僕にはそれがとても嬉しいことでした。

僕らはまた、いっしょに授業を受けて、いっしょにランチを食べて、２人でスクールバスに乗って帰るようになりました。ただの、同じ学科の仲間として。恋人にはなれない、男友達として。
それはとても切ないことだけど「卒業までの限られた時間、こうして彼の隣にいられる時間を幸福に思おう」僕は改めてそう誓って、大学生活最後の１年間を噛み締めていました。

僕も彼も就職先が決まって、いよいよ卒業を目前にした冬の終わり。
美大ということもあって、卒業アルバムのページは学生がデザインすることになっていました。写真の授業を受けていた僕はアルバム委員に任命され、同じ学科の100人近い学生の顔写真を撮って回ることに。
初めは面倒に思っていたのだけど、それは彼の卒業写真を僕が撮影することを意味していました。

大学時代、片思いを隠しながらずっと隣にいたけれど、彼と２人で写った写真は、１枚もありません。
けれど、夕暮れを背に少しはにかんだ笑顔を見せた彼のポートレートは、まぎれもなく僕が撮影したもの。それは、僕が経験したかけがえのない恋の形として、今もアルバムの中で色褪せずにいるのです。