【ゲイだけど質問ある？】もしも先生がゲイだったら！中学生の意外な反応とは

02 February 2018

「せんせいは
だれがすきなの？」
正解の
ないことばかり
尋ねる生徒

こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。

昨年から、生まれ故郷である愛知県の春日井市で、短歌の先生として中学校の教壇に立つ仕事を始めました。

【ゲイだけど質問ある？】中学校の先生になってゲイをカミングアウトした結果

僕は友人や家族にも同性愛者であることを隠していないオープンリー・ゲイでもあるわけですが、せっかくなので『中学校でゲイをカミングアウトしたらどうなるか』という検証にも取り組んでいます。

前回とは別の中学校を訪問したところ、面白い反応があったので、今回はそのレポート第２弾をお届けします！

というわけで、連載【ゲイだけど質問ある？】最後までお楽しみあれ！
ゲイ　鈴掛

先生がゲイだったら、みんなはどう思う？

教壇に立つと、生徒約40名、約80の眼球から視線を集めることになります。そんな中でのカミングアウトに、初めは緊張していたのだけど、近年テレビやネットでLGBTが話題に上ることが増えてきたおかげか、学校からも市からも、とても好意的に受け入れられて安心しました。

さて、今回はどんな学校かな？
午前中に１年生の３クラスを教えることになっていたので、気合いを入れて挑みました。
チャイムが鳴って、授業開始！
まずはスライドを使って、これまでの作家としての活動を紹介します。

「ところで、みんなは『LGBT』という言葉を聞いたことがあるかな？これはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャルの略で、近年、男の子同士や女の子同士でも恋愛したって良いんじゃないか、という考え方が少しずつ日本の中で広まりつつあります。僕もゲイの一人として、同性愛者の存在を社会の中でもっと身近に感じてもらえるような仕事にも取り組んでいます。さて、何か質問ある人はいるかな？」

１クラス目と２クラス目では、「好きな食べ物はなんですか？」「好きなゲームはありますか？」など、なんとも可愛いらしい質問が。
今はすっかりゲームをやらなくなったけど、学生時代は格闘ゲームが好きすぎて指から血が出るまでプレイしていたエピソードを話すと、みんな目を丸くして驚いてくれました。

そして、３クラス目。
「初恋はいつですか？」
おお、なかなか踏み込んだ質問をしてくるじゃないか。
「中学校１年生のときに、同級生の男の子を好きになったのが初恋かな。そうそう、ちょうど今のみんなと同じ歳のときだね」
「じゃあ、このクラスの中だったら誰がタイプですか！？」
「おいコラ！（笑）先生もう30歳なんだよ！それで君たちの中から好きなタイプを選ぶって…それはさすがにマズいんでないかい！？」
教室中の爆笑が廊下の外まで漏れるほど、大いに盛り上がりました。どこで覚えたんだよ、そんな無茶ぶり。

故郷の中学校の教壇に立ち授業をする詩人の鈴掛真さんと中学生たち。

授業後、男子生徒が僕の元に…

昼休憩のチャイムが鳴って、今日の授業はこれにて完了。
やっぱり３クラスを連続で教えると、喉がカラカラ…。毎日こんなふうに教えてるなんて、学校の先生たちって凄いなぁ。

みんなが給食の準備を始めて、僕も授業の後片付けをしていると、スラッと背の高い一人の男子が教卓までやって来ました。
「先生。先生はいつ自分が同性愛者だって気づいたんですか？」
授業の間は、特に何も発言しなくて大人しい生徒だと思っていたけど、わざわざ質問して来てくれるなんて、熱心な子だな。
「僕はね、幼稚園くらいのときには、もしかして自分は他の男の子と違うんじゃないかって思ってたんだ。だから、もう君の歳の頃には、自分がゲイだって理解していたかな」
「そうなんですね。ありがとうございます」
彼は、軽くお辞儀をすると、賑やかな生徒たちの中へ戻って行きました。

その後、職員室で先生たちと反省会をしているときのこと。
「ほら、授業が終わった後に、先生に何か質問をしに行った男子がいたでしょ。あの子ね、実は学年で一番手のかかるヤンチャな子なんですよ。そんな彼が、自分から先生に質問しに行くなんて、驚きました！」

それは、とても不思議な体験でした。
同性愛に関する質問をして来たからって、僕は彼がゲイだとは思いません。
ただ、きっと何か彼の中で思うことがあったのでしょう。それが何かはわからないけれど、世間には同性愛者という人たちが現実に存在していることを知り、そんな人たちと面と向かってコミュニケーションをとってみようと、自ら行動してくれたことは確かです。

彼の人生の中で、そんなアクションのきっかけを与えることができたのは、なんて有意義なことなんだろう。僕は静かな感動に包まれました。

テレビの中で同性愛者を見かけることはあっても、実際に会ったことはないという人が大勢います。地方都市や田舎であれば尚のこと。
けれど、僕の授業を受けてくれた子どもたちのように、まだ幼いうちに同性愛者と直接顔を合わせる機会を設けることこそ、教育として大切であると僕は思うのです。

今はまだ小さな歩みだけど、これから少しずつ全国へ向けて活動を広げていけたらと思っています。