こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。
さて、2018年。
今年も東京に暮らすオープンリー・ゲイのひとりとして、みんなの知らない話、みんなの知りたい話をどんどんお届けしていくよ!
今回は『ゲイがノンケをナンパしたらどうなるか』を実践したエピソードをお届けします。
というわけで、新年1回目の連載【ゲイだけど質問ある?】ご覧あれ!
今を去ること数年前の冬。東京の陸の孤島・新木場にあるクラブ「ageHa」で友人たちと朝まで飲んでいたときのこと。悶々とした夜に思い浮かぶことといえば、これっきゃないよね?
「かわいい子と仲良くなりたい!!」
僕の場合の「かわいい子」とは、完全に男子のことなので悪しからず。
時刻は真夜中過ぎ。お酒も回ってきて、友人との会話も上の空に、僕はどんどん煩悩に囚われていく…。
「うおぉぉぉ! か、かわいい男の子をナンパしてみたい!!」
クラブは、音楽と酒を嗜む場所であると同時に、男子が女子をナンパする場所であることは誰もが知っての通り。それを目的に訪れる女子が多いのも、また事実。
けれど、ゲイの場合はそう簡単にはいきません。
女子に声をかける男子も勇気がいるだろうけど、僕のようなゲイが男子に声をかけるには、同性愛を気持ち悪いって思ってる人だったらどうしよう…という恐怖が付きまとうからです。
「自分から男の子に声をかけるなんて…」当時の僕には、そんな勇気は持てませんでした。
ところで、僕はどんな人がタイプかというと…。
男子が長年の理想として掲げる『憧れのマドンナ』ならぬ、僕の『憧れのヒーロー』は、妻夫木聡くんです。
中学生の頃から、妻夫木くんみたいにカッコよくなりたい一心で男を磨いてきました!
10代のみんなはピンと来ないかもしれないけど、当時の妻夫木くんは、今でいう菅田将暉くんくらい人気があって超絶カッコよかったんだからね!
そして、あのクラブでの夜。彼は僕の前に現れました。
「え…? つ……妻夫木…くん!?」
二十歳前後で人気絶頂だった頃の妻夫木くんを彷彿とさせるイケメンを、僕は見かけてしまったのです。
いや、クラブって暗いし、お酒入ってたし、他の人が見ればぜんぜん似てなかったかもしれないけど、僕の眼球には完全にあの頃の妻夫木聡が映っていました。この際、似てるとか似てないとかどうでもいい!
彼は、ageHaのメインフロアで、ひとり暇そうにEDMに身を揺らしていました。友達とはぐれたんだろうか。そのとき、僕の中にひとつの勇気が芽生えました。
『あの子をナンパしてみよう!』
たとえ気持ち悪いって思われてもいい。とにかく僕は、あの子に声をかけて話をしてみたいんだ!
僕が男として一皮剥けた瞬間でした。
あれ。でも、ちょっと待って。
ナンパってどうやるの?
なんて声かけるの? 肩とか叩くの? わ…わからん…。
経験値ゼロが災いして、何をしていいのかさっぱり。とりあえず、音楽に身を任せて近づいてみることに。遠くからちょっとずつ視線を合わせて、彼の目の前までやって来ました。
僕には警戒していない様子。あとは声をかけるだけ。よし、いける。なにがいけるのかわかんないけど。大音量のEDMに負けないように…いざ!!
「…ねえ! キミ、かっこいいね!」
だ…だせぇ…。
怪しい勧誘みたいなことしか言えなかった自分がいまだに恥ずかしい…。
「ハハッ、ありがとうございます!」
でも、彼は爽やかに笑顔で答えてくれました。
「ひとり?」
「いや、友達と来たんですけど、どこにいるのかわかんなくて」
「そうなんだ。僕はゲイなんだけどさ」
「え! そうなんですか!?」
「僕も友達とはぐれちゃったんだよね。よかったら1杯奢るから、話し相手になってくれない?」
「いいですよ」
僕の会話の運びから昭和臭さがぬぐいきれないけれど…こうしてなんとか僕は彼の連絡先をGETして、生まれて初めてのナンパを成功させたのです!
はぁ。緊張した…。
彼は僕より3つ年下で、都内で美容師をやっているんだとか。ちなみに彼女なし。
連絡先を教えてくれただけでその日は大満足で、すぐに別れたのだけど、後日、友人の男女5、6人と中目黒で飲んでいるとき、ダメ元で誘ってみると、なんと来てくれることに!
でも、これがマズかった…。
普段ナンパなんかしない僕がイケメンを連れて来たもんだから、友人たちが冷やかすは質問責めにするはで、彼はたじたじ。
ちゃんと一対一でお茶にでも誘うんだった。僕って、ほんとにカッコ悪い…。大して楽しめない状況に、小一時間で帰してあげることにしました。
季節は真冬。駅から少し歩く店だったので、僕は自転車の荷台に彼を乗せて、中目黒の駅まで送ってあげることにしました。
「せっかく来てくれたのに、なんかごめんね」
「いえ、楽しかったですよ」
そんな会話を一言、二言交わして、彼を改札の向こうに見送った後、僕らは二度と会うことはありませんでした。
あれから年月が経ち、この数年で同性愛者への世間の理解と関心が急激に深まりましたね。
今思えば、突然ゲイにナンパされて彼も戸惑っただろうに、ちゃんと連絡先を教えてくれて、誘った飲みに来てくれて、男女のナンパと同じように応えてくれた彼は、とても優しい男の子だったなと思うんです。
僕がもっと上手く気遣ってあげれば、もっと仲良くなれたかもしれないと、後悔は残るけれど…。
もちろん、相手が異性愛者である以上、ゲイの僕と恋愛関係になることはないわけだけど、あのとき「この子に声をかけたい!」「仲良くなりたい!」と思った感情に目を背けず、勇気を出してよかったなと、今は思います。
いかがでしたか?
みんなも「どうしてもこの子と仲良くなりたい!」と思える人に出会ったら、勇気を出して声をかけてみようね!
最後に、これだけは言わせてほしい。
ナンパって難しいね。どうやったら上手くできるの? 教えてエロい人!
■ライタープロフィール
■連載アーカイブ
【ゲイだけど質問ある?】そもそも「なんで男なのに男を好きになるの?」って話
【ゲイだけど質問ある?】“ゲイ=女子”って思ったら大間違いなんだからね!
【ゲイだけど質問ある?】クラスにゲイがいる確率、知ってる?
【ゲイだけど質問ある?】同性婚って、ぶっちゃけどうよ!
【ゲイだけど質問ある?】「ゲイらしく」より自分らしくの週末
【ゲイだけど質問ある?】自分の性別、ホントに把握できてる!?
【ゲイだけど質問ある?】ゲイの世界の浮気事情と男が浮気をする理由とは
【ゲイだけど質問ある?】ゲイのせつない片思いの話をしよう
【ゲイだけど質問ある?】ノンケはゲイの友達を作るべき?
【ゲイだけど質問ある?】アメリカでの友情青春物語
【ゲイだけど質問ある?】ゲイに「目覚める」キッカケとは?
【ゲイだけど質問ある?】叶わなかった初恋が教えてくれたこと