第4回となるこの連載。今回は、春から美容学校に進む高校3年生のお二人が対談のゲストです。
一人は、ホスト系美容高校生として活動している佐地竜也さん。もう一人はアレンジ美容高校生のhina aizawaさん。
お2人とも、高校生ながら、SNSを使用して美容情報を常に発信したり、アレンジの撮影会を行ったりと意欲的な活動をしています。
今の高校生は、何を考えて活動し、どんな美容師になろうとしているのか。
木村さんからのアドバイスは、これから美容師を目指す人に向けてはもちろんのこと、長く美容師を続けていくためのメッセージが込められています。
木村直人(以下、木):今日はよろしくお願いします。美容師さん以外の方と話すことは普段ほぼないですね~。今、どんなことをされているんですか?
佐地竜也(以下、佐):僕はこの春から関西美容専門学校に入学します。あとは、夜のお仕事をされている方のためのセットサロンでアルバイトを始めるので、セットの技術を身に付けて、SNSの更新に繋げていければなと。入学するまであと2ヶ月くらいなので、美容学生になってからのSNSの更新の仕方を考えて、YouTubeや動画の活動をしていけるような準備をしていきたいなと思っています。
hina(以下、h):私は、国際文化理容美容学校に通う予定です。今は美容室でアルバイトをさせてもらっていて、受付を中心とした接客業やヘルプ、床掃除だったりと裏方のお仕事をしています。あとは、ショーのヘアメイクをさせてもらったり。
髪を触ることが元々好きだったので、高校生のうちからできることを探した結果として、Twitter上でヘアアレンジを頻繁にアップするようになりました。
木:僕が高校生くらいのときって、全くそういう情報ってなかったんですよね。だから漠然としたまま美容師になるというか。商業高校に通っていたので、まわりには進路を驚かれましたし。両親が美容師だったので、美容という仕事においては、知識が深いものにはなったんですけど。今の高校生くらいの子たちが美容師になろうと思うキッカケって何ですか?
h:私はおばあちゃんが美容師をしていて、一番身近で見てこれた仕事だったということがキッカケです。仕事を見るのも好きだったし、細かい作業が好きだったので自分に合っているかなと思い、中学生のときに美容師になろうと決めました。
佐:僕は、中学生のとき担当してくれていた美容師さんに憧れてですね。
木:すごいですよね。僕は、ただ単純に東京に出たいという思考でした。美容師だったら、親も東京に行くことに納得してくれるかな、みたいな理由で。
だから割とそういう考え方にアナログさを感じるというか。今だったらYouTubeでセットしている人を見てカッコいいから、みたいなニュアンスで美容師に憧れるのかなって僕は思っていたので。またそこは違った部分が今見えたなという感じです。
そもそも、なぜインターネットで発信をするようになったんですか?
佐:最初は、MTRLでも連載している高津理容美容の木村賢司さんがTwitterで発信しているのを見て、自分もできることをしていきたいなと思って始めました。
その頃は、まわりで肌荒れに悩んでいる人が多かったということもあり、肌の勉強を最初に始めて、知識が増えてきたところで美容情報をつぶやき始めるようになりました。そこから色んなことを勉強するようになって、最近ではパーソナルカラーについてのことをブログに書いてみたり。
今は、発信したり、自分の思うことを書くことが日常になっています。
h:私は、Twitterで発信するようになるまで、‟自分は、まわりと違う”と思い込んでいたんです。まわりはなんとなく美容師になりたくて、なんとなくカッコイイなって思っているくらいなんだろうな、でも自分は違うぞって決めつけていて。
でも、Twitterで竜也くんに出会ってから、同い年なのに自分から発信をしていてすごく刺激を受けました。竜也くんのように何か自分がしているわけじゃないのに、まわりの人と何が違うんだろうって情けなくなったというか。専門学校に行ってからは頑張るのはもちろんだけど、今からできることがあって、それをやっている人もいるのに、自分は何をやっているんだろうなって。それが発信するようになったキッカケです。
木:発信をずっと続けるのは、何か目的があってのことだと思うんですけど、現段階ではどういうものを目指していますか?
h:始めはまず、自分を知ってもらうことが一番の目的でした。私のフォロワーさんには、美容系の仕事に就きたい人が多いんですけど、ただ単純に自分でヘアアレンジしたいのに上手くできないな、とか美容に興味がある人に向けて為になることを発信していきたいなと。
佐:僕は、肌や髪の毛の悩みがある人にとって少しでも知識が増えたらいいなとか、自分のツイートがキッカケで他のことを調べるキッカケになればいいなと思って発信を始めました。今はhinaちゃんが言ったような、美容以外のジャンルの方と交流して、将来的に関われるような繋がりができればいいなという目的を含めてやっています。
木:すごくちゃんとしていますよね。
余談なんですけど、僕は、木村賢司さんのこと、最初は頭おかしい人なのかな? って思っていたんですよ(笑)。天才美容学生と自分で名乗っていたり、様子がおかしいじゃないですか。
でも、大阪のイベントに木村くんが見に来てくれていて、スーツ姿のいで立ちで、「僕が天才美容学生です」とか言ってあいさつをしてくれたんですよね(笑)。
そこでおもしろかったのが、第一声目。
「普段発信を見られていると思うんですけど、すみません」「これはビジネスなんです」と言ったんです。
へー、おもしろい発想でしっかり考えてるんだなと思って。彼は、自分を演出してるだけで、様子がおかしかったことに対しても自覚症状があってやっているんだと。すごく頭がいいですよね。そこから認識が変わって交流するようになりました。
その言葉をキッカケに、10代の子でも、ビジネスっていうのを考えながらやっている人もいるんだってなって、見え方が転換しましたね。
だから今そういった発信をしている人たちは、ある種賢いなと思って。その辺から興味をもち、いろんな人を見たりしています。
だから、佐地くんが以前ホスト系美容高校生と名乗っていたのもおもしろいなって。
木:今後、まずは美容師免許を取るということが必要になってくると思うのですが、美容師になれたとしたら、どういうことをしていきたいですか?
h:私は、専門学校を卒業したら、まずロンドンに留学したいです。ロンドンのサスーンアカデミーに行って、そこで少し学んでから日本で就職しようと思っています。学んだことを活かしつつ、今ない美容師というか、今ないデザイン力みたいなものを新しく自分でつくっていけるような美容師になりたいです。
佐:僕は、ヴィジュアル系の要素があったり、パンク系といったような少しコアなお客さんをターゲットにした美容師になりたいなと思っています。
需要も供給も少ないとは思うんですけど、自分自身がそういう職業に憧れがある時期もあったくらい好きなので。
木:目的や理想像も大事だと思いますけど、なぜロンドンなんですか? ただ単純に海外に行きたいだけなら全然いいと思うんですけど、悪い言い方をしてしまえば、今さら向こうで勉強しなくても大丈夫な時代ではあるかなと思う部分もあります。
h:日本にだけとどまりたくないというのと、サスーンの綺麗な揃ったカットがすごく好きで、原点で学んでみたいという気持ちが強くて。
木:若いので、遠回りすることはいいかなとは思うんですが、卒業していきなりロンドンに行って、国内に戻ってくるってなると、手順ミスというか逆かなとは思ったりします。国内である程度やって、就職したサロンでカットをしてもいいというお墨付きをもらった上で渡英する流れのほうが、もしかしたら順番的にはいいかもしれないですね。
帰国後、日本のサロンで仕事をすることになったときに、アカデミーを出ただけでは、スタイリストとして認めてもらってすぐ髪を切らせてもらえることはないかなと思うので。どうだろう? と少し思いました。渡英して向こうでお店をオープンするくらいの勢いだったらいいかもしれないですけど。まあその頃、日本の美容業界がどうなっているかは分からないですけどね。ロンドンから帰国したとすると、外国の発想のほうが先行して入ってきちゃって日本の風習にまずなじめるのかっていうこともあるかもしれないし。
ちなみに、今の美容室にどんなイメージを抱いていますか? 一年で半分の新卒が辞めるとか、いろいろネガティブなことを聞くでしょ?
佐:自分の中では、昔はすごく厳しかったけど、今は少しずつ見直されている部分が多いのかなと。例えば、手荒れを防ぐために手袋をしてシャンプーをしてもいいサロンがあったりとか。あとは、アットホームというかラフな感じの美容室が増えているイメージがあります。だから厳しくないというわけではないですけど。
h:お客さんとして行っていた頃は、キラキラしていて、みんなが理想に描くような美容室って感じでした。でも、アルバイトを始めて裏方の仕事をするようになってから、よく考えたらこういうこともしなきゃいけないんだなというか、裏でこういうことをしている人もいるんだなと思ったときに、このギャップで結構心が折れてしまう人が多いのかなって自分が身をもって感じました。だからマイナスなイメージとか、辞める人が多いと言われていることに納得した部分があったのは事実です。でも私がそこで辞めたいと思わなかったというのは、自分の気持ちの強さを確認することにもつながりました。
木:……甘いな!(笑)
一同:(笑)。
木:まぁそれは冗談ですけど。
今、内情的には緩まっているし、先輩も割と優しい。でも美容師を辞める人の数が変わらないという、不思議な現象が起きているんですよね。だから、先行してアドバイスしておくと、みんなが想像しているものとは、違うものっていうのが現実的にあるんだと思います。あとやっぱりいろんな意味で理不尽ですよね。だけど、その理不尽な部分をどう自分の中でかみ砕いていくかが大切。まにうけると心が折れるから。
自分はそういった理不尽の中で生き残ってきた人間なので。トップっていうものが存在してこそのカーストで、キャリアを積んだ人が残っていくスタイルがやっぱりあります。でも、彼らの世代が業界に入ったときにまだそういう風習みたいなのが残っていたら、どう思うんだろうなっていうのは自分のなかで感じています。
だんだん緩くなってるのに、それでも辞めていく人がいるっていうのは、給料が安いことなのか。やりがい的な部分なのか。ネガティブなことは言いたくないですけど、どこに答えがあるのかなって思ってみているのが今ですね。
次週後編。これから美容業界に入る人は、目的を二つ持っておくと良い!? 発信の仕方で気を付けたほうがいいことってなんですか?
→後編はコチラから
■連載アーカイブ
1998年生まれ。「アレンジ美容高校生」として、Twitterでヘアアレンジを頻繁に発信、メディアに取り上げられるようになる。現在は、学生団体のショーのヘアメイクもこなすスーパー高校生。春に控えた美容学校入学に向け、肩書にとらわれないようにと、アレンジ美容高校生の名を外して活動を開始。
■Twitter
1997年生まれ。「ホスト系美容高校生」として活動。数々のヘアショーや講演を見に行ったり、ブログで美容情報を発信。高校生ながら美容の勉強に貪欲すぎる姿が注目を集める。hinaさんと同じく、現在は肩書を外して活動。佐地さんが発端人となった美容LINEグループも開始したので、興味のある方はTwitterをチェック!
ヘアスタイルスキルにおいては語るに及ばず、常に先を走る日本のトップクリエイターの1人。「上質、洗練」をテーマにし、グラデーションカラーに代表される様に斬新な価値観で世の中にトレンドを発信し続けてきたオールラウンドプレイヤー。
情報発信者としても高いスキルを誇り、常に精度の高い情報を提供し続けている。
主宰するオンラインサロン「マルチバース」においては開始2日で400名の会員を動員。LINEスタンプディレクション、美容メディア構築など、美容師の仕事だけにとどまらない活動を通じて社会に対しての貢献を成している。
芸能人顧客多数、雑誌などでも目にしない事はない程にサロンでもサロン外でも精力的な活動を行っている。
【著書 ハラドキヘアスタイルブック(三栄書房)】はAmazonビューティーランキング第1位を獲得。
■木村さんの過去の連載はこちら
撮影/saru