【前回のあらすじ】
「今っぽさ」のある稲垣さんに対して、挫折ポイントを探しておくことをアドバイスとした木村さん。成長するためには、満たされすぎないほうがいいという意見も飛び出しました。後半では、「雑誌をやりたいんです」という話す稲垣さんに対して、最近の美容師さんに多い傾向について木村さんからの助言が…。
全若者に共通! 稲垣さんの立場を、自分に置き換えながら読んでみてください。
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木村直人(以下、木):前半では、お客さんが付くように頑張るとおっしゃっていましたが、どのように頑張りますか?
稲垣佳恵(以下、稲):今の自分にできることはSNSだなと思うので、そこを発展していけたらなって思います。
このお店の人はみんな個性が強くて特徴的なので、埋もれてしまうなと思っていて。今は“新卒の子”という印象があるのでいいですが、後輩が入ってきたら、自分のキャラクターのようなものがないと覚えてもらえないと思うので、そういった目的でTwitterをやっています。どんなことでもいいので、私の名前が、私の知らないところ出てくれるようになるといいなと。可愛いスタイル、カッコいいスタイルが伝えられて、楽しそうにしているなとか、実際に行ってみたら満足したっていうのが広がっていけばなって思います。
木:窓口や入り口としては、SNSを活用していきたいんですね?
稲:そうですね。それでスタイリストデビューできたら、雑誌もやりたいなって思います。
木:なんで雑誌をやりたいんですか?
稲:私のスタイルが載って、それを見た人が「ドキッ」としてお店に来てくれて可愛くなって、それを見た人にも「ドキッ」を電線させていけたらいいなって。いろんな人に、私が創ったものが広がればなって思います。
木:雑誌を見て来店する人って多いですか?
稲:女の子は多いですね。男の子は、読モさん経由やサロンの名前で来てくれたり。でも今は、雑誌とかテレビより一番みんなが見てるのって、Twitterかなって思うので。
木:(笑)。
稲:スタイリストになったら、雑誌にもスタイル載せたりと可能性が広がるんですけど、アシスタントという立場なんだから、SNSを今からやっておこうって。
木:雑誌って読みますか?
稲:お店にあるものくらいですかね。あと立ち読みしてパラパラっと見たりとか、お客さんに聞いた当たる占いに興味を持ったりとかそのくらいで、買ったりはしないです。
木:ですよね。ってことは、お客さんも買ってないんですよ。
稲:……そうですよね。
一同:(笑)
木:美容師が読まないのに、お客さんが読みますかっていうところも、結構いろんなテーマがあって。
稲:何で自分を知ってもらえばいいんですかね……?
木:だから「SNSですよね」って答えを自分で言っていたじゃないですか(笑)。
稲:そうですよね(笑)。でも、最初はSNSって抵抗ありました。「SNSって現代っ子だな~」って思ったんですけど、いや乗っかろうって途中で思えるようになりました。
木:現代っ子が現代っ子であって、何が悪いのかなって思うんですよね。
稲:まわりからの目が気になっていたんです。元々お店の人たちもそこまでやっていなかったし、同級生に「Twitterめっちゃやってるじゃん」って言われたら嫌だなとか思いつつも、高校生のときに書いたブログが今来店につながっていることもあって、今やっておけば最終的に何かつながるかもしれないと思って。
木:僕も「めちゃめちゃやってるよね」「いつやっているの?」とか、そういうの散々言われてきましたけど、なんとも思わなかったんですよね。なんとも、というか、この人たち世の中のことを知らないんだな、くらいにしか思わなかったです。
だって、時代って常に進むのに、そういう人ってただ足踏みをしているだけの話で。ネット業界的に言えば、情報弱者ですよね。だって、時間っていうのは進むことしかないのに、SNSがすべてなくなってブログしかない時代に退化するのか? っていったらそれは絶対ないですよね。
ないのに、新しいものが出てきて、拒否したり受け入れられない人っていうのは、自分からすると、ちょっと知恵遅れな人に思える部分があります。
逆に、そういうことを言ってくる人がいたら「まだそんなこと言ってるの? 昭和だよ。今、平成28年ですよ。21世紀入って17年経っているんですよ」って僕は弁論するときは言っちゃいますけどね(笑)。
稲:でも雑誌も大切ですよね? ホットペッパーとか。
木:それはもちろんそうですし、別に雑誌が悪いとかっていう話ではなく。
僕、「雑誌やりたいです」っていう美容師さんには、現実的なことを言うんですね。僕は、すべての雑誌をやってきた人だから、大切さも良さも分かっているんですよ。でも、これからの時代に対して雑誌やりたいんです! って聞いたとき、「雑誌見るの? 買ってる?」と質問すると、「見ていないです」「買ってないです」って答えがくる。ただ、漠然とした目標として言っているだけなんですよね。自分がお金出して買わないようなものをやってどうするの? って思います。
稲:確かに……。
木:じゃあお客さんがそれを果たして買うのかって言ったら、「それは…」ってなるわけで。
僕は、そういう風にわざと強くいって、少しずつひらめかせていくスタイルの教育をしていくことが多いんです。でも、稲垣さんは今ご自身で答えを見つけているから、2、3年後にはそこ(SNS)からお客さんに来てもらうことができるだろうと思います。
でも、それは入り口でしかなくて、本当の勝負は来店されてからなので絶対満足させて、という。そこから先の話をできるかなって思いますね。
木:最終的に、SNSや雑誌を通じて、たくさんお客さんがいらしていただけるようになりました。その方々をもてなして満足してくださり、お客さんが稲垣さんのことを広げてくれるという方程式がある程度出来上がりました。そうすると自分が満たされるじゃないですか。その先はどうするんですか?
稲:満たされはするんですけど、ゴールはないなって思います。ずっと続けていきたいなって。
木:続けてはいくんですけど、今度はどこに目標を置いて、何をやっていこうっていうのはありそうですか?
稲:入社する前は、自分でお店をだしたいなとか考えていたんですけど、一年働いてみて、このお店に恩返ししたい気持ちが強くなりました。だから今は、私を知ることによって、ROVERを知ってもらいたいなと思っています。
木:結婚とかはしないんですか?
稲:します!
木:子供とかはほしくないんですか?
稲:いつかは……。でもそしたら、一人の女性として確立したいですね。奥さんとしてでも、お母さんとしてでも、美容師としてでも。美容だけじゃなくて、お母さんになったときにキラキラしていたいというか。
木:お母さんになったときにキラキラしているっていうのは、具体的に?
稲:具体的にですか…。うーん、でも、人を感動させることで、自分自身も輝くかなって思っているので。
木:感動させるっていうのは方法論として、自己発信をしていくってことですか?
稲:そうですね。
木:美容師としても母としても、女性としても輝いてる姿っていうのを見ていただくってことですね。
稲:見ていただく……っていうか、そういう自分でいられればなって。ちゃっちいですかね? 私。
木:いや、全然ちゃっちくないです。ただなんか、あんまりこう定まっていないなって感じと、それ自体が今の年齢では難しいかもしれないですけど。
今日の対談っていうのがどちらかというとアドバイスというか、押し問答している感じだなって。引き出して、今、答えというかアドバイスを投げていますよね。
例えば、お客さんに対して投げる「楽しいですよ」ということも、具体的な例がないと伝わらないじゃないですか。だから今そこのヒントを投げています。
将来こうしていきたいんです。→じゃあどのようにして? という。
多分、今、「どのようにして?」を全部投げているような感じで、そうすると自分に対してのクエスチョンができるじゃないですか。だからそういったものが、今見えたなって。
僕も自分に対して、いつも「?」を問いかけるようにしています。
「なんでこうしたいんだろう」「なぜこうしたい?」っていうクエスチョンがどんどん出てくると思うので、その部分を20代前半の美容師さんに提供できればいいのかなって今日の対談は思いました。みんな投げかけられていない部分があると思うので、常に自分に「?」を問うってことですね、今日は。
稲:常に自分に「?」を問う…。
木:「?」というか、なぜを問う。「なぜこうしたい?」「なんでこうなんだろう?」「どうして?」という追及をしていると、多分全部高まってきますよ。
「なんで来店したのか?」「なんでもう一回来てくれなかったのか?」という問を常に自分にも投げて、それがなんとなく分かったら、「じゃあどのようにしていこう」っていうのが次に出てくるんですよ。それを見つけてクリアにしていく。
僕は、答えを出すことを繰り返していく人生を過ごしてきていますよ。それをやっていってもらって、5年後にまた対談したいですね。
稲:5年後ですか~!? どうなっているんですかねぇ。
木:同じことは言っていないと思いますよ。今、目の前のことをポジティブに消化できていて、ある程度満たされているとは思うんですけど、面白い話も結構あって。3年後にデビューするための窓口は今自分で見えている状態だし、何をどうしていったらいいのかっていうのは、「SNSが入り口です」と自分で答えを言っていましたよね。雑誌はそのあとの発展。まあでも5年後くらいにはないかもしれないけど(笑)。
稲:えー(笑)。
木:誰も読んでないかもしれないじゃないですか。あとは全部タブレット化しちゃうとかね。
今だったら、dマガジンで税抜き月額400円で雑誌が読み放題だから。でも、雑誌社にとっては収益率が下がっちゃうので、そこが発展しまくっていったときにはどうなんだろうなって考えますけど。
撮影をすることは、自分自身の勉強になるし楽しいのでどんどんやっていったほうがいいけど、お客さんが読んでるかどうかは分からないですよ(笑)。もしそういうのを発展させたいなら、自分で買うとか、そういうことをしておくとオファーも増えるかもしれないですね。僕は、オファーされたら雑誌を買っていたし、どういう傾向、系統だって研究して、望むようにしていたんですよ。
そういったことをやっていくと楽しい未来が待っていそうな気がしますけどね。何よりも雰囲気がいいので、すごくいいですよね。
稲:雰囲気いいですか?(照れ笑い)
木:いいですよ。今日、いじめてるわけじゃないですからね。がんばってください。
稲:はい! これからは、なぜを問うクセをつけていけるように意識していきます。ありがとうございました!
■連載アーカイブ
【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第4回ホスト系美容高校生 佐地竜也 アレンジ美容高校生hina aizawa
1994年12月21日生まれ。東京都出身。日本美容専門学校を卒業後、昨年ROVERに入社。現在は、1月6日よりOPENしたROVERの2店舗目『boat by ROVER』に勤務する。Twitterでは、女性のヘアアレンジを中心としたツイートをしている。カラーモデルも募集中なので、気になる方はTwitterをチェック!
ヘアスタイルスキルにおいては語るに及ばず、常に先を走る日本のトップクリエイターの1人。「上質、洗練」をテーマにし、グラデーションカラーに代表される様に斬新な価値観で世の中にトレンドを発信し続けてきたオールラウンドプレイヤー。
情報発信者としても高いスキルを誇り、常に精度の高い情報を提供し続けている。
主宰するオンラインサロン「マルチバース」においては開始2日で400名の会員を動員。LINEスタンプディレクション、美容メディア構築など、美容師の仕事だけにとどまらない活動を通じて社会に対しての貢献を成している。
芸能人顧客多数、雑誌などでも目にしない事はない程にサロンでもサロン外でも精力的な活動を行っている。
【著書 ハラドキヘアスタイルブック(三栄書房)】はAmazonビューティーランキング第1位を獲得。
■木村さんの過去の連載はこちら
撮影/saru