明日のモテるを配信中!

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 最終回<後編>U-REALM高木裕介

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 最終回<後編>U-REALM高木裕介

Views 09 May 2016 (更新日:
  • Facebook
  • Twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

air木村さんの連載もついに最終回。

前回のお話では、手取り100万のハードルや売れる人の特徴、U-REALMが方向転換したキッカケについてお伺いしました。

前回のお話はこちら

今回は、デジタルネイティブ世代から生まれるスターへの期待。そして今若手に思うことについてお話してくださいました。2人の目標は圧倒的老害にならないこと? これから美容業界を志す人、今生きている人に送るメッセージが詰まっています。

経営をするっていうのは、違うところにエネルギーを注ぎ込まなきゃいけない。 自分が独立しない理由はそこにもある(木村)

譛ィ譚代&繧・AM8V0178木村:U-REALMができてからもう10年くらいですか?

高木:11年になるね。

木村:11年間の中で今後の課題や、どのように進んでいきたいといった展望はありますか?

高木:これまでの10年は、看板をつくるにしても、雑誌や業界紙に出るにしても、常に僕が先頭に立って動いてきたんですよ。店内の内装なんかもね。10年目から、もっと「みんなでつくっていく」感じにしたいと思っていて。

木村:でもすでにそういったアクションも行われてますよね。フランチャイズという展開があったりとか、コラボサロンとか。

高木:そうですね。今後はもっと彼女らがやりたい形に合わせていける余裕が欲しいですね、財力も含めて。例えば、現状で2名のスタイリストが一気に店を出すとなると「けっこう借り入れしなきゃ」と考えるけど、そこを自己資金でいける強い企業体にしていかないとな、と。給料も上げていきたいし、社会保障も充実させたいと思うと、やることが増えてきたなって思います。

木村:「経営をする」ということは、「美容師」とは違うところにもエネルギーを注ぎ込まなきゃいけないですもんね。 自分が独立しない理由はそこにもあるんですよ。「10年も先頭をやっていけるかな」という不安もありますし。その間に人が育つかという課題もあったりとか……。

高木:ウチにキム(木村さん)のように先頭走ってる人がいたら、むしろ株を渡しちゃって一緒に経営してもらうけどね。

――そうすることで、きっと全員に当事者意識が芽生えますね。

譛ィ譚代&繧・AM8V0187木村:そうですね、そうだと思います。

高木:結局、収入が増えてもプライベートな支出は変わらないんですよ。いつまでも。ということは、これ以上手取りが増えても僕はもう使うことはない、もう充分なんです。そうすると、会社に貯まっていくじゃないですか。それをみんなの報酬としていけることが今の理想形なのかな。

木村:そのスタイルは本当に理想ですね。年商だけで言えば1億円くらいやっていそうな気がするけど、それでも「もっとお金をくれ」ということではないんですね。何か他の充実感を得たいと思ったときに、それが歩合制での対価というよりは、立場による責任感だったり、動かせる人間の数を増やしたりとか……そのほうが、美容師としての夢が広がる。確かにお金も実質使わないんですよね。ある一定を超えると。

高木:一晩で何10万も使うことなんてないですし。

木村:なるほどなあ、そういった形づくりが今後の展望なんですね。

高木:そうですね。今後5年くらいはその自己実現に没頭するんじゃないかな。

“個”のパワーはじゅうぶん見たし、限界も見えた。そこから何ができるのか(高木)

th_0626BLEND_0015-のコピー

▲東京ブレンドのメンバー。木村さんは今年1月より参加

木村:あと「東京ブレンド」という組織について。ブレンドファミリーもそうですが、お店の経営とは違った形のアプローチをはじめたきっかけを教えて下さい。別に自分のお店だけで進んでもいいわけじゃないですか。なのに、あえて集団にしていくことの、本質的な意図が気になります。

高木:震災後に僕が(サロンに)戻ってきたときに考えたのですが、さっきも(前編参照)言ったように、元は赤文字系のサロンだったんです。そのとき、当時Bellのような美容室がバッと人気になって、その時にカジュアルなスタイルも時代に合致しているなと感じたんです。その技術をウチのスタッフに見せてあげたかったんですよ。その代わりに、ちゃんとしたアップやヘアメイクの技術、スタイリストへの教育をこちらも提供して、お互いフォローしていくっていう。

木村:東京ブレンドには、僕も所属させていただいているんですけど、僕自身は「理念に共感した」というより、人に対して共感して参加させていただいて。df574d9c43f2cf7dc322f8a58992460ba4b56336 cd306f54cfecc430f0fe9dcfdd40ddce_7bde2b353982d5339db76a378c13a701

IMG_3293▲東京ブレンドのワンシーン

――協会みたいですね。

木村:たぶんそういうことなのかなと。

高木:要は、美容業界が細切れになっている現状で、腕のあるスタイリストを集結させた強さが欲しいというか、“集”のパワーが見てみたかったんです。この十数年で、美容業界の“個”のパワーはじゅうぶん見てきたことで、その先の限界も見えた。そこから何ができるのか、何人の美容師を幸せにできるのか。細かく言うと、給料体制だったり社会保障の話になりますが……。この間、誰かがつぶやいてたけど、「美容室の4%しか社会保険入ってない」とか、そんな現状なんですよ。

木村ウチ(air)もスタッフが300名近くいるので導入するまで色々あったみたいです。

高木:そういう部分も誰もやらないのであれば、僕らのコミュニティが率先してやるべきなんじゃないかなって。

――流行を発信するだけじゃなくて、業界自体の仕組みをつくっていくという感覚ですか?

高木:その”両方”を同時にやっていかないといけないのかな。チェーン店のようにデザインは発展させず、そのままでいいという人もいるから。でもそうじゃなくて、両方やっておけば、何か違う新しい形ができるんじゃないかと。

木村:デザインを軸にした雑誌など活躍してきたメンバーが、美容業界の仕組みを変えていきたいという感じですか。

高木:それもありますね。例えば“スタッフがやめないサロン”をつくるとなったときに、今は助成金があったりとか、逆に社会保険で何千万もとられている、というところを突き詰めていくと、国のあり方というか、政治(法律)に直結してるところまでいっちゃうんですよね。

サロンワークもシステムを改良していかないと、これ以上給料を上げられない。例えば4月に10人、入社するとするじゃないですか。そうすると、せっかくの12〜3月の売上(利益)や稼働率が一気に下がってしまう。それで4月から暇な時期がずっと続いて、12月にまた上がって……その繰り返しだったりするんですよ。そのとき、システムを変えるためには大臣に掛け合わないといけない。制度がどうだとか、そういうところまでいっちゃうんです。

――「美容学生の卒業時期や入社時期を変更していく」ということでしょうか?

木村:僕もそれが本質だと思っています。本当に美容業界を変えたいんだったら、政治に介入していくしかないんですよ。僕は「アオハラ」が世界に誇れる文化だと思っているんです。それを海外やインバウンドにアプローチするのであれば、話をするところは経済産業省ですよね。あるいは港区長とか。そういうことをしない限り、業界は変えられないんじゃないかなと思っていて。

高木:「東京ブレンド」を会員制にした理由もそこにある。

木村:そういうことも最終的にはできたらいいなと思ったりしますけどね。

――すごく大きな話ですね。

砂利道でもいい道筋さえつくっておけば、次の世代がアスファルトを敷いてくれる(高木)

譛ィ譚代&繧・AM8V0199木村:今の若い層、10代後半〜20歳前後の人たちに思うことってありますか? 日頃ふれあうこともあると思うんですが。

高木:僕の中では、今の20〜25歳にスターが出ると思っているんですよ。

木村:僕らの一世代前の美容師を超えられるスターってあんまりいないような気がしているんですけど、そういう空白世代をおいて20〜25歳くらいっていう感覚ですか?

高木:これからは30代が時代を変えていくと思っているんだけど、インターネットとかいろんなものが整備されて、みんなが使いこなせるようになるのにもうちょっとかかると思うのね。

だから今の25歳が30歳になったぐらいで、彼らがもっと若いデジタルネイティブを上手く使えれば、その層が一番新しい時代の美容業界をつくっていくんじゃないかな。
逆に今の30歳はそういう流れを作ってあげることはできると思うんですけど、抜かれちゃうと思うんです。僕ら40歳手前からすると、今の30歳にもすごい人いると思うんですけど、25歳が今の10代を引き連れてきたときに抜かれちゃうような気がしていて。

木村:僕の専属アシスタントも19歳です。女の子なんですけど。

高木:ああ、若くして入った?

木村:そうです、18歳で。僕は今、入社アプローチを18歳にしようとしているんです。高校卒業とともに美容師免許がとれる学校に注目していて。

高木:うちも17歳が入る予定。

木村:なんでかと言うと、スタイリストになるまでの期間が長くなっちゃうんです。若ければ若いほど素直だし、柔軟だしっていうのもあって。

高木:僕は今の高校生ぐらいが「美容業界よくなったね」と言うとき、ちょうど中心にいるんじゃないかな、っていう感じがします。

木村:あとはネットやSNSに関しては、どういう見解を持ってますか?  我々が若いときには存在しなかったものが、若い子たちにはスタンダードになってきているっていう。そういったものに関して、アラフォー経営者としての価値観や、高木さんご自身のSNSへの関わり方というのを、ちょっとお伺いしたいんですけれども。

高木:僕は特に集客をしようとかそういう目的では使ってない。スタッフでも35歳くらいの幹部は使えていないですね。30歳ぐらいのスタッフは使い始めていて、20代はもっと上手に使えるんだけど、それが自分のメリットになるまでできてない。まだまだウチのサロンの課題でもあるから、僕がとりあえずさわりだけでも関わっておかないと途切れちゃうかも、という意図で使ってます。

木村:自分自身がやっている姿を見せるってことですね?

高木:そうですね。でもウチで使い方に制限を設けたりはしないし、何をアップしても僕はなんとも思わないですし。すごく飛躍した言い方をすると、もはやスマホは手の一部というか人間の脳。今までは、知らないことは雑誌を読んだり、テレビを見たりしなきゃいけなかったけど、今は頭脳が手の中にあるから。もう宇宙人になってるんですよね、人間自体が。そしてスマホはテレパシーですね。それをどう使うんだろうっていうことじゃないですかね。

――電池切れたら死んじゃう(笑)。

高木:そうなんです。

木村:電池なんて絶対切らさないですから。常に100%(笑)。

高木:そうだな。宇宙人により近くなったかなあ。スマホがもはや脳みその一部だから、そこからどうやって集客や、自分のアピールに使うのかが大事。でもそれをやっている人がほとんどいない、ってことにもちょっとびっくりする。

――だから先にやり始めた、若者に支持されるサロンが目立ってきたのでしょうか。

高木:そうですね。でも彼らは自己プロデュースが上手いから、自らがタレントという感覚にも捉えられますよね。ですよね。僕らはどっちかというと職人、経営者寄りの感覚なんだけど。

――若い人たちは誰をフォローしているかによって、自分たちのビジョンとかスタイルが変わってくるのかなと思っていて。タレント感の強いサロンを見ている人は自分もタレントになりたくて業界を目指す、とういうことにもなりそうです。

高木:そういうのが昔もありましたね。

――「カリスマ美容師ブーム」ですか。

高木:当時は美容師がタレントになったとき、弊害が生まれたわけですよね。今、また新たにタレント美容師みたいな人たちがバーッと出てきたけど、そのジャンルはまだ成熟していないんですよね。なので、この流れについてはまだなんとも言えない。今の彼らのファンは10代が中心ですが、それが20歳になっとき、まだカッコいいと思ってくれるのかどうか。

木村:現実的ですね(笑)。そのとおりだと思います。

高木:さらにファンの子が美容学生だとして、そこに就職して学んでいく上で、向上心を持って技術や薬剤を極めたいと思ったときに、それが可能なのか。今はすごいイケメンが揃っていますが、でもそういう人もいなくなるかもしれない。少し前、ウッチー(内田聡一郎)だったり、奈良くん(奈良裕也)だったり、そういうのがタタタッと出てたじゃないですか。でももしかしたら、この先5年そんな人材は出てこないかもしれないし。

木村:そう考えるとイケメンは多かったですね。奈良さんも、ウッチーも。でもウッチーはたぶん”本質”に迫っていくなかで、タレント感を自分で断ち切りましたよね、それもある意味正しい。

高木:この流れはチョキチョキ世代から始まってるというか。これが5年後どうなるかは、ちょっと謎かな。彼らはこれで確立していいけど、そこに憧れた子たちが同じことをやっていいかというと、またちょっと違ってくる。SNSの使い方としては推奨はできない。うちのスタッフが自撮りしてたら、「いいね」しないですし(笑)。

木村:自撮り的な使い方ってことですね。なるほど。

高木:自撮りというよりも、自分をタレントとして見立てることかな。

――セルフプロデュース系のですか?

高木:長く続かないんじゃないかなあって。こればっかりはわからないですが。

木村:自撮り枠代表として、顔芸はいかがですか?(笑)。僕はけっこう自撮りをするタイプなので。

高木:ブログでね。

木村:自撮りが「言葉」になるんです。

高木:なんか自撮りって感じはしないけど(笑)。

木村:顔で文章になってるんです。

高木:それは文章で人を笑わせるための「顔」だから(笑)。たしかに自撮りをすればオシャレにカッコよく見えるし、憧れる人が何万人も出ると思うんだけど、それをウチのスタッフに「ちょっとイケメンだから」とやらせたところで、上手くいくかは疑問。つまり商売として推奨しづらい方法なんだよね。結局商売が大前提にあるので、万人が稼げるスキームをすすめていかなきゃいけない。だから載せるならスタイルとか、最近言っているのは「髪の博士になれ」とか。

木村:でもそれが本道だと思いますよね。やっぱり「美容師」というのが前提なんですよね。

高木:そうです。

木村:僕も高木さんも変わらないのは、自分自身が商品というわけではなく、技術が商品だということですよね。最後にあれなんですけど、ご結婚は?

高木:したいですね。結婚したいとか、嫁ほしいというよりは、子供がほしいです。

木村:なるほど。かわいいですよ。

高木:説得力があるね(笑)。最近、お客さんの子供とか動物がかわいく感じてしまう。若い頃は他人の子供なんてよくわからなかったし、自分が飼っている犬や猫はかわいかったけど、人のウチの犬とかそんな興味なかった。でも今はかわいいもの全部かわいいみたいな。女子高生みたいになっちゃってる(笑)。

木村:高木さんが安心して結婚するために、まず幹部が必要ですね。

――たしかに経営者って、自分が一番最後ですもんね。

木村:それはあるかもしれないですね。

高木:例えばキムみたいな人が出てきたら、それはさっき言ったようになっていくと思いますけど、たぶんそれが今の25歳なんじゃないかなと思っているんです。だからあと10年はやらないといけないかも。

木村:この先10年は全力っていうことですね。自分もまだまだやんなきゃなあ。

高木:それが砂利道でもいい道筋さえつくってとけば、今の高校生たちが、アスファルトはひいてくれると思うので。想像を絶する時代になるでしょうね。10年後。

木村:楽しみにしながらね。

高木:我々は出る幕ないですよ。

木村:ただ最終的には我々も幸せになれますように、頑張っていきましょう。

高木圧倒的に老害にならない。邪魔をしないように愛されるっていう(笑)。

――圧倒的に老害にならない(笑)。

木村:理解がやっぱり大切ですからね、今の子は。

高木:そこと敵対しちゃうと、力を持たれたときに消されちゃうので(笑)。

木村:というところで締めて大丈夫ですかね。長時間ありがとうございました。

 

――木村さんの連載はこれにて最終回。来週は、連載を通して感じられた思いや総括をお届けします。
続きはこちらから

連載アーカイブ

【対談連載】木村直人の『Youは何しに美容業界へ?』第1回 :AKROS smiloop砂川勇斗(前編)

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第2回Lily 寺村優太

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第3回Bella Dolce日野達也

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第4回ホスト系美容高校生 佐地竜也 アレンジ美容高校生hina aizawa

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第5回boat by ROVER稲垣佳恵

【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第6回OCEAN TOKYO 米田星慧

 

プロフィール

takagi


高木裕介

1977年8月15日生まれ。北海道出身。山野美容専門学校を卒業後、都内2店舗を経てafloatのオープニングスタッフとして参加。その後、afloat-fオープンと同時に店長に抜擢される。 2005年にはU-REALMをオープン、2013年6月には原宿にL.O.G by U-REALMをオープン。2012年には東京ブレンドの立ち上げに参加。サロンワークをはじめ、美容業界誌・ファッション誌の撮影、セミナー講師、CMのヘアメイクなどでも活躍している。

Twitter

HP

U-REALMの最新ヘアカタはこちら

2017メンズヘア【U-REALM】グラムウェーブ


木村直人

ヘアスタイルスキルにおいては語るに及ばず、常に先を走る日本のトップクリエイターの1人。「上質、洗練」をテーマにし、グラデーションカラーに代表される様に斬新な価値観で世の中にトレンドを発信し続けてきたオールラウンドプレイヤー。
情報発信者としても高いスキルを誇り、常に精度の高い情報を提供し続けている。
主宰するオンラインサロン「マルチバース」においては開始2日で400名の会員を動員。LINEスタンプディレクション、美容メディア構築など、美容師の仕事だけにとどまらない活動を通じて社会に対しての貢献を成している。
芸能人顧客多数、雑誌などでも目にしない事はない程にサロンでもサロン外でも精力的な活動を行っている。
【著書 ハラドキヘアスタイルブック(三栄書房)】はAmazonビューティーランキング第1位を獲得。

Twitter
Instagram
BLOG
HP
facebook

■木村さんの過去の連載はこちら

【木村直人連載 最終回】yoッ!俺だってこんなんだったんだからお前ら絶対大丈夫!

撮影/saru

  • Facebook
  • Twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加