第3回目となる連載のお相手は、Bella Dolceの日野達也さん。日野さんがライターとして描いたコラム記事をキッカケにつながったお二人ですが、木村さんが一目置いているアシスタントでもあるとのこと! アシスタント業務に励む傍ら、ライター活動や、作品撮りに注力している真意についてお伺いしました。
(※取材時はアシスタントとしてのお話をお伺いしていますが、昨日スタイリストデビューを迎えています)
木村直人(以下、木):今日はよろしくお願いします。対談のスタートとしては、イケメンですね。
日野達也(以下、日):とんでもないです(笑)。よろしくお願いします。
木:日野さんのことは、彼が書いている記事で知ったわけですが、元々美容師はどういう経路でなったんですか?
日:最初から美容師になろうと思っていたわけではなく、元々は大学に通っていました。商業高校に通っていて簿記が大好きだったので、特別やりたいこともないし、その道で行こうと公認会計士を目指していまして。
神戸から上京して、大学に通いつつ、大原専門学校の社会人スクールで日商簿記の1級講座を受けていたんですけど、レベルの差が歴然としすぎていて、この道は難しいのかなと感じるようになりました。せっかく東京に来たんだから他の道も探してみようと思って、そのときたまたま髪を切りに行ったのがgricoさんだったんですよ。
そこで、エザキヨシタカさんの話を伺って、考え方に刺激を受けて、美容師の道で行こうと思い、大学は1年通ったところで中退して、美容の専門学校に通うことになりました。
なので、1年遅れてスタートしていて、本当は4年目の代ですが3年目です。
木:エザキくんは、僕もビジネスパートナーとして仕事をすることが多いんですけど、何を感じたんですか?
日:美容師だけど、美容師っぽくないっていうんですかね。野心も強いですし、いろんなことにチャレンジをしたいとおっしゃっていて。元々公認会計士を目指していた僕と違って、考え方も柔軟ですし、真逆の生き方だなと思いました。そのときは、美容師というより、生き方の面で憧れました。
木:それで美容師になったと。エザキくんイケメンだしね。基本的にはカッコいいなって思われる人だと思うんですよね。僕のところとかに男のコ来たら、怖いって思われるからね(笑)。
サロンモデルや読者モデルみたいなこともやっていたんですよね?
日:そうですね。主にCHOKiCHOKiでお世話になって、他でもSNAPの活動が多かったかもしれないですね。サロンモデルは、それこそgricoさんもお仕事をいただいていましたし、apishさんもありましたね。いろいろな方との繋がりがそこでできました。
木:今は、まだアシスタントなんですか?
日:近いうちにスタイリスト試験を受ける予定で、早ければもうすぐスタイリストデビューできるかもしれません。
(※取材は昨年末でしたが、なんと昨日1月11日にデビューが決定しました!)
木:何かを仕掛けていきたいっていう目標はありますか?
日:個人的に今重きを置いているのが作品撮りなんですね。撮影もレタッチも自分でしっかりとイメージからつくり上げていて。同世代のアシスタントの中でも、そこまで高いクオリティで撮影をしている美容師さんがやっぱりまだ少ないので。
(日野さんがヘアメイク、カメラでレタッチまでした作品撮り)
木:成長は見ていますよ。上手くなっているなっていうのはすごく思っています。
日:ありがとうございます! 表現や評価として分かりやすいものが撮影の写真になっているので、クオリティを上げていきたいですし、instagramのおかげで各地方のレベルが高い美容師さんも世にでてきやすくなっている分、負けたくないなと思います。
木:僕、なぜこの対談を日野さんにお願いしようと思ったかっていうと、アシスタントでそういう活動をしっかりしているのは、まだ少ないなと思ったからなんですよね。始めた頃からの過程を見ていたので、この1年をかけて上手くなっているなっていうのが、すごく見えて。やっぱやればやるほど上手になるんですよね。
上達がすごく見える人って言うのは、何か考えていたり、自己反省がきちんとできる人だと思うから、どういう風に自分の中で改善しているのかを教えてください。
日:自分の中でも改善点は挙げますが、今、7年目の美容師さん2人と僕の3人でルームシェアをしているので、他のサロンの先輩にアドバイスをもらうことが多いですね。遊びに来てくれた美容師さんと、美容の話をすることもあって。
木:家でそういうことが行われるのはいいですね。
日:はい。家なので、フラットかつ割と近い距離で話せているのかなって。そういうことが一番の改善ポイントになっています。
あとは、いろんな方のスタイルを見てなんでこんなに沢山のいいねがついているのか、フォロワーが多いのかっていうのを、写真やコメントを見て考えて取り入れようとはしています。
木:僕のことは何で知ったんでしょうか?
日:いろいろな美容師の方が木村さんの書いた記事をシェアしていたので、そこがきっかけです。すごい方だなって記事もスタイルもチェックは常にしていたんですが、たまたま僕の書いた記事に反応していただいて。
木:女性美容師を口説く方法ってやつですね。あれはおもしろかったですし、僕もアンサー記事のようなものを書いたんですよね。
現役美容師が伝授!オシャレでかっこいい男性美容師を口説く方法。 | NAOTO KIMURA http://t.co/41zflVcVqB
— 木村直人【air/LOVEST】 (@air_kimura) 2014, 6月 22
ごめん。かぶせた。 現役美容師が伝授!おしゃれで可愛い女性美容師を口説く方法。 | 木村直人http://t.co/tntSa4YJaa RT @0263tatsu: 現役美容師が伝授!お洒落で可愛い女性美容師を口説く5つの方法 http://t.co/5w6siLNZFv
— 木村直人【air/LOVEST】 (@air_kimura) 2014, 6月 16
@air_kimura 完敗です。笑 勉強になります
— 日野達也 (@0263tatsu) 2014, 6月 16
日:あれには完全にもっていかれました(笑)。ありがたいことに、そこでつながりができたのでよかったなと思います。
木:そうですね。そういう活動をしていなかったら、知るってことがなかなかできなかったと思います。なんだこのイケメン美容師はって思うくらいで。
僕、どちらかというとイケメン美容師っていうくくりに割と抵抗感があって。自分もそういった企画に出させていただいたことはありますが、基本的には、本質派、本格派として生きていきたいと思いながら過ごして今に至るわけでして、彼に対してもそういう空気を感じたんですよね。
実際イケメンなんだけど、そう呼ばれるより、美容師として評価されたいのかなっていうのをすごく感じていて、だからこそ、1年通して上達していく様とか、見させてもらっているんですけどね。
なぜ他者から見てもそういう風になっていけてると思いますか?
日:モチベーション的な部分が理由ですかね。僕、元々コンプレックスの塊で。大学を中退した経歴もありますし、現状いま無名のサロンで働いていると。もちろんそれも理由があってのことなんですけど、やっぱり有名店の同世代に勝つには、ある程度自分でアクションを起こし続けないと、埋もれてしまう。自分の技術力やモチベーションを上げ続けなきゃいけないのと、このエリアの美容師さんには負けたくないって気持ちがあるからだと思います。
木:だから細かいところも自己修正ができているってことですよね。僕も作品撮りをしていたんですけど、それはただ単に楽しかっただけなんですよね。始めた当時は渋谷店で店長をやっていたんですけど、その時は雑誌集客がメインだった頃で、年間を通して様々な雑誌に出させてもらっていたので集客っていう面においては困ってはいなくて。
たまたま後輩がカメラを持っていたので、撮影を現場でヘアメイクとして見ていたし、自分でも撮ってみたくなっちゃったんですよね。それで、やってみたら楽しくて、追っかけたくなっちゃったっていうのが理由なんですけど、どういうマインドで今の若い人たちがやっているのかなって。今やっていて、何が一番の目的ですか?
日:僕もやっぱり楽しい気持ちが一番ですね。アシスタントで、そこまで集客を意識しなくてもいいっていうところもあるので、撮りたいモノを撮っているっていうか。その撮りたいイメージを実現させたいからカメラを追及しないといけないなって思います。
木:これからスタイリストデビューしていくにあたって、どんな美容師さんになりたいですか?
日:サロンワークはもちろん、若手ということを利用して新しいことをやっていきたいと思っています。漠然とですが、広告系や音楽系の知り合いがいるので、そういった人と組んでヘアを絡めたことをやりたいですね。
木:じゃあ美容師としてのサロンワークを追いかけながら、別の仕掛けをしていきたいっていうね。そこに今の作品撮りはどう絡まってくるんですか?
日:作品撮りはもう別のもので、それを見てお客さんが来てくれたらいいですし、自己ブランディングのひとつです。
木:僕、一回記事で、今の時代は自己発信も含めて全部できないとダメだろっていうのを書かせていただいたことがあるんですね。僕も美容師だけやっていればいいとはあんまり思っていないので。ある種ちょっと髪を切るということを超越した表現者みたいなものが、僕の未来的なビジョンのわけです。あとはカルチャーを想像するっていう、自分のコンセプトがあるんですけど、今も記事を書いたりしてカルチャーを想像しているじゃないですか。そういう発想って前は、誰かライターさんに書いてもらう発想でみんななかったと思うんですよね。
日:美容師自らっていうのはなかったですよね。
木:そう、キュレーターっていう文化を美容界に浸透させたのも多分自分だと思うし。日野さんが記事を書きだしたキッカケはなんだったんですか?
日:元々文章を書くのが好きだったので、そういう力は養っておきたかったっていうのもあるんですが、知り合から美容系の記事を書ける人を探しているっていうお話を聞いて、「やらせてほしい!」と言って一昨年の夏くらいにスタートしました。
木:今、アシスタントという立場ですけど、記事を書く時間はどうやって確保していたんですか?
日:ルームシェアを始めるまでは千葉の実家から通っていて、往復2時間くらいかかるので、電車に乗っている時間帯にパソコンで書いて、一週間に一記事のペースで書き上げていました。最近は全然書けていないんですけど。
木:そういう記事を書いて反響はどうですか?
日:実際木村さんのシェアがあったおかげで、大分見ていただけるようになりました。美容系よりも、コラム系の記事のほうが反響がありましたね。
木:僕は30代中盤からそういうアクションを始めたんですけど、今20代前半というなかでそういうことをやっていって、10年後にはどうなっていると思いますか?
日:目先のことに必死すぎて、ビジョンを考えられてない状態です。でも、美容師としても大成されていて、かついろんな仕事をやっている木村さんのようなポジションに憧れがありますね。目立ちたがり屋なんですよね、僕(笑)。
木:僕は別に目立ちたがり屋ではないですけどね(笑)。
どちらかというと美容師からはそっとしておいてほしい。もちろん尊敬する人もたくさんいるんですけど、例えば同世代の方と話していて、自分のためになっているなっていう感じはあんまりしなくて。
サロンワーク内での話とか、カメラがどうやったら上手くなれるとか、自分のインスピレーションに作用するような建設的な話をできたことがないので。唯一楽しかったなって思った人と、仕事をしたりしているんですけど。
例えば、オンラインサロンもエザキくんがどんどん進めてカタチにしようとするタイプ。もう追及がすごいっていうか、「どうしますか? どうしますか?」 みたいなあのパワーは自分にとってもためになることで。
近年の中ではそういったひとつのキッカケから、オンラインサロンがカルチャーとして成り立ってきているじゃないですか。オンラインサロンの魅力として、若い美容師さんたちが何に悩んで、何に葛藤していて、何を思ってそれを始めたのとか、そういうのが今非常に楽しいですね。だから日野さん自体も楽しみな人物の一人なんです。
次週後編! キャリアが無視される時代到来!? 若手美容師の今後のブランディングとは―。
→後編はこちらから
■連載アーカイブ
【木村直人 連載】『Youは何しに美容業界へ?』 第4回ホスト系美容高校生 佐地竜也 アレンジ美容高校生hina aizawa
1992年3月23日生まれ。兵庫県出身。大学を中退後、エビスビューティーカレッジに入学。銀座のサロンを経験後、現在のBella Dolceにジョイン。アシスタント時代より、自らがヘアメイク&カメラを務め、レベルが高く、熱心な作品撮り活動を行っている。先日1月11日にスタイリストデビューを迎えた。
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ヘアスタイルスキルにおいては語るに及ばず、常に先を走る日本のトップクリエイターの1人。「上質、洗練」をテーマにし、グラデーションカラーに代表される様に斬新な価値観で世の中にトレンドを発信し続けてきたオールラウンドプレイヤー。
情報発信者としても高いスキルを誇り、常に精度の高い情報を提供し続けている。
主宰するオンラインサロン「マルチバース」においては開始2日で400名の会員を動員。LINEスタンプディレクション、美容メディア構築など、美容師の仕事だけにとどまらない活動を通じて社会に対しての貢献を成している。
芸能人顧客多数、雑誌などでも目にしない事はない程にサロンでもサロン外でも精力的な活動を行っている。
【著書 ハラドキヘアスタイルブック(三栄書房)】はAmazonビューティーランキング第1位を獲得。
■木村さんの過去の連載はこちら
撮影/saru