みなさん、こんにちは! 蓮です。
今回から、いろんな分野で活躍している社長・代表さんに、仕事についてお話を聞きに行くよー!
記念すべき第一回は、株式会社楽日(らっか)の代表である加藤晴久さん。
今回は加藤さんにお話を伺うべく、原宿にあるLUCKAND Gallery Cafe&Barにやってきました!
なんとここ、加藤さんがプロデュースをしてるギャラリーカフェなんだって! 絵が飾ってあったり、スプーンやフォークがアートになってたり、まじでオシャン。デートでも使えちゃいそうなくらい、素敵な空間です!
加藤さんは、アーティストグッズの制作を手掛ける会社の代表さんなんだ。めっちゃ優しそうじゃない?
で、気になるのは、どんなものを作ってるかってこと!
楽日はRADWIMPSとかUNISON SQUARE GARDEN、Mrs. GREEN APPLE のプロダクトディレクションも手掛けてるんだって!
すげーー! ということで、詳しく話を聞いていきます。
蓮:そもそも、楽日って何をしてる会社なんですか?
加藤:うちはアーティストグッズをデザインから製造まで一括で行う会社です。一緒にお仕事させていただくのは、インディーズからメジャーアーティストまで様々だけど、例えば、『君の名は。』で国民的なバンドになった…
蓮:RADWIMPSですか!?
加藤:そうです。うちの会社は今年で創設10周年なんだけど、約8年9年前からずっとやらせてもらっています。ここ最近のアーティストさんだと昨年大ブレイクしたSuchmos さんやUNISON SQUARE GARDENさん、Mrs. GREEN APPLEさんとか。
蓮:アーティストさんから依頼があったら、全部引き受けてるんですか?
加藤:受けない場合もあります。
蓮:え! インディーズすぎるとあんまり会社の実績にならないとか・・・?
加藤:そんなことはないよ(笑)。どれくらい有名かとかはあまり関係なく、「このアーティストは何か芯を持ってるな」って思えるかどうかだね。
自分の体は一つだし、時間も限られているからね。だからこそ、ただ仕事として受けるのではなく、自分が何か掻き立てられて100%以上の能力を出せる人たちと共に歩んで、みんながハッピーになる絵を描きたいんだよね。
蓮:アーティストグッズの制作って、具体的にどんなものを作ってるんですか?
加藤:メインはやっぱりバンドの象徴になるTシャツ。あとはタオルやトートバッグなど。モノありきで考えるのではなく、曲や歌詞から広げていくと新しいモノに出会えたり、いろんな手法を駆使して、バンドのイメージが伝わるものを創っていくのは奥深いし面白い。
蓮:確かにバンドグッズって、個性ありますよね。最近は、「ライブグッズなの!?」って思うほど、そのへんの服よりもオシャレだったりして驚きます。
加藤:本当にオシャレになってきたよね。アパレルメーカーよりも、凝るようになってきているから。
ただイベント業界のTシャツは「想定より原価が掛かってしまったから、少し金額をあげて販売しよう!」というようなことが容易にはできないんだよね。
相場の販売価格が2500円や3000円と決まっているから、クオリティーを落とさずに元値をどこまで抑えられるかっていうのが課題になってくる。
10代、20代のライブにくるような子たちは、そんなにお金を持っているわけでもないからチケット代もあるしグッズをそこまで高くはできないよね。
蓮:たしかに。チケット代だけでも、正直なところ、若い子にはキツイっす!
加藤:そうだよね。実際ミュージシャンにとって1番大事なのは音づくりであって、それは絶対だと思う。
今までグッズはわりとイベントの賑やかし的なポジションにあったけれど、最近は“バンドが活動していくために必要なもの”として認知されるようになってきた。自分たちの分身がグッズになっていくわけだから、僕はグッズにも血を通わせてモノづくりに取り組める人が本物のアーティストだと思う。そこがプロとアマチュアの違いかな。
蓮:そもそも楽日を設立しようと思った理由ってなんですか?
加藤:LUCKAND Gallery Cafe&Bar(加藤さんが経営してるカフェ)みたいな空間を作りたかったというのが、楽日を設立した1番の理由だね。僕が22、23歳くらいの時からの目標だったんだ。
元々、デザイン系の大学に行きたかったんだけど、家庭の事情で諦めてメーカーに就職した。そこで働くなかで、デザイン会社に仕事を依頼したことがあって、その時にプロの手にかかると自分がイメージしたものが、とてもすごい作品になっていて雷に打たれたほどの衝撃を受けた。
それで”やっぱりデザインを学びたい!”と思ったので会社を辞めて、2年分のボーナスで買った車を売り、学費にかえてデザイン学校に行くことにしたんだけど、その時に、芸術系の子たちが集まっているカフェを見つけて。
そこのマスターには、親からはもらえない角度からいろんなアドバイスをもらっていて、ある日、「”何年後に自分はどうなってる”か自分の目標を数字で考えて、それに向かって努力していきなさい」と言われた。
それをキッカケに「マスターが提供してくれたような空間を、今度は自分が作りたい」という目標ができて逆算して生きてきました。
僕が目指してるのは、そのカフェのように、ちょっと情報に敏感な人が集まってきてくれる場所でありながら、いざという時に背中を押してもらえるような空間。少し興味があるものに出会っても、なかなか人って一歩踏み出すことができないから。
蓮:僕は人見知りだから、いきつけのカフェとか憧れます(笑)。
加藤:僕も以前はすごく苦手だったんだよね、自分ひとりで入ったことないカフェに入るのとか(笑)。もう輪ができあがっていそうな雰囲気があったりするから、そこに飛び込んでいくって結構な勇気がいるじゃない?
だから、誰かの展示とかがあると入りやすくなるかなと思って、LUCKANDはGallery Café&Barにしたんだ。
背中を押す前に、その入口を作ることがすごく大事なことだよね。
LUCKANDも、そういうひとつの入口として考えてもらえたらなと。こういう場所もあるんだと知ってもらって、気軽に立ち寄って何かを得て帰ってもらえたらいいなって。
だからこそあまり敷居を高くしたくないけど、僕は表層や内装を拘ってしまうタイプだから、ガッツリと作ったら「この店オシャレですよねー」って一歩引かれるイメージもあるから、2号店を出す際はもっとラフなお店にしようかな(笑)。
蓮:でも何でそんなに“モノづくりの入口”を作ろうとしてくれるんですか? 加藤さん自体は今好きなことをできてるじゃないですか。
加藤:単純に、モノづくりの楽しさの現状を知ってほしい。けど、やっぱり若い人たちって華やかな世界で働きたい人が多いじゃないですか。
モノが生まれている工場は最高にクリエイティブなのに、暗い・汚い・キツいの3Kなイメージがないですか?
蓮:(付き合いたくない職業3B(バンドマン、美容師、バーテン)みたいな言い方・・・!)
加藤:日本のモノづくりの職人さんは寡黙な人が多いから、あまり表に出ることもなくて、世間や若い人たちに彼らの仕事の魅力が伝わってないように感じるんです。だから、そういう世界への入口のひとつに僕がなれたらな、って。
バンドTシャツとかのアーティストグッズは工場で生産されてるし、そういうエンターテイメントが「モノづくりと隣接しているところもある」ということに気づいてもらいたいですね。工場は、いますごく若者の力を欲しているので。
現代って、すごくスピード社会でスマホの普及もあったりして、現場のスピード感も変わってきてるけど、職人さんがそれに乗れているかというとそうでもなくて。スマホで写真を撮ることさえも大変だし、やっと写真を撮れたとしてもどうやって送ればいいのかわからない。「LINEってなに?」というレベル。
だからこそ、そういう時代の波に乗れる人がいるだけで、工場のスピードは本当にあがる。逆に時代の波に乗れないことで、しっかりとしたモノづくりの技術を持っていても淘汰されてしまう。
昨今だと費用が安い海外の工場と比べられてしまったりするし、いざ日本で作るとなっても「国内だからもっと早くできるでしょ?」って言われてしまう。このままいくと、早く安くというキツい仕事だけが国内に残ってしまうことになるんだ。
メールやLINEのようなツールを流暢に使いこなせる世代が、そういう業界に参入してくれたら現状を打破するきっかけになると思う。だから“若者”の力がすごく重要なんだよね。
もしちょっとでも「楽しそうだな」と思ったら、アルバイトでも体験でもいいから工場に出向いてみてほしい。そういう子たちがくることでスピード感があがるし活気もつくし、本来であれば衰退しちゃう技術が継承されたりするだろうから。
蓮:そうなったら、今好きなモノとかもなくなっちゃう可能性ありますもんね。アパレルの学校で勉強していたはずなのに、モノづくり業界の現状にそんな問題があるの知らなかったです。
加藤:学校で教えるのはそういうこととは別だもんね。就職先もデザイナーとかメーカーブランドとかで、○○工場とかなかなかないでしょ? だから、工場さんも人を募集するのは大変みたいなんだ。
「どういうところに募集するんですか?」と聞くと、「求人広告なんて出せる余裕がないからさ、もうハローワークだよね」と返ってくる。あとは兄弟や親戚とか身内をいれたりするんだって。ただ、それで繋がっているところはまだよくって。
決して儲かる業界ではないという印象もあるから、モノづくりが好きじゃないと続かないんだよね。だから親も「跡を継いでほしい」と強く言えなくなっちゃって、継承されずになくなっていってしまうというのがある。「やる気さえあれば教えたいんだよ」という職人さんはいるけれど、どこに募集を出していいかすらわからないという問題があるんだよね。
蓮:この現状は、本当にたくさんの人に知ってほしいですね。僕ら世代で、ファッションやエンターテイメントに興味を持っている子ってたくさんいると思うので。
加藤:工場は日本全国にあるので、自分の住んでるところのわりと近くに縫製工場やプリント工場があるかもしれないし、 もし興味を持ってくれたら、工場見学に行ってほしい。たとえ冷やかしでもいいから、現場に足を運ぶことで何か変わってくるかもしれないので。都会に出ることだけがすべてじゃなくて、自分の近くでもエンターテイメントと関われる可能性はある。そういった意味で自分の可能性を諦めないで、積極的に行動してくれたら嬉しいですね。MTRLの読者の方には、キラキラした未来を持ってる若者がたくさんいると思うので。
蓮:どうしても目立った仕事をする人たちに目がいきがちだけど、ライブで自分が作ったTシャツをみんなが着てる光景を見れたら工場で働いててよかった・・・!って思えそうですよね!
加藤:そうだね、それはもう感激するだろうね! そういう仕事があるよってことを、もっと多くの人に知って欲しいですね。
今回は自分も興味のあるモノづくり現場のリアルなお話や、作り手の想いなどを聞くことができてすごく為になりました! 自分が特にグッときたのは工場の職人さんのお話です。これを読んでくれたみなさんにも、熱い想いとか伝わってくれたら嬉しいな。
貴重なお話を聞いて、あんな風に熱い思いを持ってモノづくりに取り組んでいるから良いものが作られているんだなと感じました。
■プロフィール
加藤晴久
「LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-」オーナー/共創メディア「LUCKAND」編集長/「LUCK’A Inc.」代表取締役・マーチャンダイザー
音楽やデザインという感性ではメシは食えない!という自論を持つ親の元で育ち、一時はその道を絶たれスポーツメーカーに就職するものの、夢をあきらめきれずにバンタンデザイン研究所に入学する。その後、デザイン事務所に再就職をし、アパレル商社デザイン部門の立上げを経て、独立。株式会社楽日(ラッカ)を設立する。凛として時雨、RADWIMPSをはじめ数多くのアーティストのプロダクト・ディレクションを行う。
2011年には現「LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-」の原型であるカフェとギャラリーの複合店をオープン、2016年12月には共創メディア『LUCKAND』の発行。さらに、2017年より様々なクリエイターの作品をTシャツにプリントして展示する【TaG】(T-shirts Art Gallery)を開始するなど活動の幅を広げている。
共創マガジン『LUCKAND』HP
http://luckand.jp/
HP
http://www.lucka.jp/
Instagram
@halhisa_kato86
LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-HP
http://place.luckand.jp/
■あわせて読みたい!