人生の先輩である企業の社長さんにお会いして、成功の秘訣を学ぶこちらの企画。今回は、MTRLでもお馴染みのTENGAで11年間広報宣伝を務めた松浦隆(まつうら たかし)さんの第三の挑戦。53歳での独立・起業についてお話をお伺いしてきました。
PRって? コンサルって? 漠然としていてよく分からなかった仕事について教えていただきました。僕たちは、知らず知らずのうちにモノをストーリーとして消費していたんだ…!という発見たくさんのお時間でした。今回、社長に会いに行ったモデルは大学新2年生の松原涼くん。
涼:松浦さんは、11年間勤めていた株式会社TENGAを退職し、新たにPRコンサルという分野での事業を始めたとのことですが、ぶっちゃけ53歳での起業ってどんな感じなんですか? 僕のイメージ、年齢が上の人ほど会社に固執して流動的でないイメージがあります…。まずは、キッカケから教えてほしいです!
松浦さん:そもそものキッカケは今年の1月に53歳になったタイミングで誕生日を迎えるにあたり、(65歳まで現役で働くと仮定して)あと12年しかないと気づいたんです。もうひとつ何か違うことに挑戦するなら、今でギリだって。
だから、それがどちらに転ぶにせよ「好きなこと・新しいこと」に挑戦するのはアリだなと。それで、53歳の誕生日に起業しようと思ったんですよ(笑)。
映画『レオン』や『トランスポーター』などで知られるリュック・ベッソン監督がなにかのインタビューで話していた「人生を3つ楽しみたい」という言葉が、自分の胸に響いて、彼の3つ目の人生はなにかまだ漠然としていて、それが仕事とは限らなかったけれど、3つ楽しむ、第三の人生という考え方を自分も歩いてみたいと思いました。
涼:3つ目の人生…! まだひとつめの人生も謳歌できているか分からない僕には考えも及ばない世界です。起業にあたり不安や怖さとかはありませんでしたか?
松浦さん:もちろん不安はありました。自分が就職活動をしていた学生時代は特に終身雇用は当たり前の考え方で、大企業が傾くなんて考えもしない時代だった。
でも、こうして自分から計画的に、年齢にあわせて自分の人生を用意する生き方に楽しみを感じるし、それは思いつきでできることではないな、と。漠然とでも「概念」が自分の中にあると、タイミングがあったときに考え方に移行できる。自分にとって53歳がそのタイミングだったんだって思ってます。
涼:自分のお父さんよりも年上の松浦さんが、こんなにもアグレッシブに挑戦を続けていて、なんだかめっちゃカッコイイって思いました。
涼:まだ出来たてほやほやの新しい会社ですが、現在松浦さんが行っているビジネスを教えてください。
松浦さん:(名刺を取り出す)「バズ ストーリー ライター」これが今の肩書きです。簡単にいうと、PRのコンサル!
涼:PR? コンサル??
松浦さん:なにをするかというと、大きく「宣伝」というものがある、その中に広告とかPRとかってあって。広告とPRの違いは結果は同じでも役割が違うということ。例えば、広告という手法で商品や情報を広める場合、媒体(雑誌やテレビなそ)に対し、広告費を支払わなければ掲載してくれません。
逆に、PRはお金を媒体には払わず、どれだけ媒体が自然に取り上げてくれるような話題を作れるかということ。だから、そのために商品の強みや、引きになる話題を作っていくこと。話題性があるから取材依頼が来る。
僕の仕事は、フックになる話題を作りバズ(拡散)らせる、広告料を払わずに広める材料をつくることなんです。そのために、背景やストーリーから作り込む仕掛け人みたいなね(笑)。
今の時代、お金払って作った広告ってあんまり消費者が信用してないでしょ? 人の感想や口コミ、リアルなところの方が信用が上でさ。だからこそ、より人の記憶や消費行動に繋がりやすい仕組みを作る方が、みんなが幸せになるなと思ってこの仕事をしています。
涼:ちょっと難しい話ですが、頑張ってついていきます。PRがどんな仕事かは理解できたんですが、コンサルって主にどんなことをするんですか?
松浦さん:お客さんが何をしたいか(課題・目的・目標)を、解決していくことをPRの面からサポートする。可能性をあげていく仕事ですね。
そこまで大きい企業でなければ、専任のマーケ担当がいなかったり、やりたいことがあっても方法が分からなかったり、少ない予算で話題を作ることがしたいができなかったり等、悩みも様々で。今の世の中の流れがはやすぎるからこそ、キャッチアップできるような人たちで補完しあう環境を作りたかったんです。
それに、クライアントサイドから起業し、コンサルをする自分だからこそクライアントの気持ちがわかるし、その立場に立てる。だからこそ、いままでのコンサルとは違う立場から寄り添えますし。何をしたらいいかわからないマーケ担当者は、いきなり大きな代理店へいく前に是非うちに相談してほしいな(笑)。
松浦さん:前職(TENGA)時代から、いろんな人からPRについての相談を受けていたのだけど、当時は相談にこそのれたけど、あまり本格的に実行まではできなかたったんですよ。逆に起業したら、その人たちの悩みに寄り添い、最後まで実行ができると思ったんです。
涼:なるほど! それは、嬉しい話ですよね。
松浦さん:自分のナレッジが資産にもなるビジネスなので、身ひとつでミニマムに始められるし、大きなリスクを背負うことなく起業ができたので、今っぽく動けているかなと思ってます。
涼:身ひとつでミニマムに、ってすごく今っぽい働き方でカッコイイですよね!
松浦さん:プロジェクトごとに最強のメンバーをアサインしてチームを作ることもできるので、逆に大手にはできないスピード感や提案力で仕事ができるなと思っています。
今後は、組織に依存した仕事のスタイルでなく、特定のスキルを持った”個”同士が主体となり活躍していくのが主流になるんじゃないかな。
涼:大学生の僕が、将来にむけて今からしておいた方がいいと思うことってありますか?
松浦さん:(なにごとも)頭で考えるより、やってみること。経験してみないとわからないことがたくさん。海外も行った方がいいし、できる経験からインプットを増やすこと。リアルを知ること。とにかく、環境から受けるインプットを増やすこと。今後は、それがとても大切だって思う。
メディアなどのアウトプットされたものから得た知識と実際の現場から五感で得たものは全然違うから、やってみきゃわからない。そのスタイルは様々あっても大丈夫! どうしても、苦手を克服するよう教育されてきたと思うけど、
苦手なことを克服しようなんてしなくていい。得意なことだけのばしたらいい。
いろんな考え方があるけれど、人間って一番好きなことを仕事にした方がいいと思うんだ。やってて楽しい仕事を見つけられるのは、世の中でほんの一握りの人だけ。もちろん苦労だってあるけれど、一般社会で自分の好きなことを仕事にできる人は少ないからこそ、単純だけど、そこを目指すべきだって思う。
涼:ちなみに、好きなことや夢に対しどう向き合えばいいですか?
松浦さん:うーーん。結論から言うと、好きなことや夢に対して、脳内完結で終わっちゃう若い子が多いよね。やればいいだけ、やらずに頭で考えて結論出して終わっちゃうのは怖いことだし、勿体無い。
答えが正解だけで終わってしまう前に、自分で考えて行動してほしい。
大人と子供の違いって、概念的にはいろんなモノゴトに対して自分の考えを持っているか持っていないかだと思っていて、それは別に間違っていても、偏っていてもいいんじゃないかな。自分のロジックがあり、意見を持ち、言えることが大事。
スマホが手放せない若い子はさ、なにかひとつの指標で決めつけるのは早い。これからの時代、文字情報としてのインプットよりも五感で経験したインプットのある人が強いから、マジョリティーの意見=正解だって自分で自分に言い聞かせないこと。
自分で得る正しいインプットを恐れないで。自分の衝動に正直になろう。
涼:松浦さん、本日はありがとうございました。
今回は、PRの仕事について学ぶことができました。
また、いくつになっても挑戦することを楽しむ松浦さんの姿に人生の先輩としてのカッコよさを見出しました。消費者として今まで感じていた話題も、もしかしたらPRにより作られたストーリーだったのかも。そんな風に今まで一方的に受け入れてきたインプットを自分の意見を持ち再確認してみることが、今回のお話で得た楽しみでもあるのかもしれません。
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