このコラムでは、ふと街中で見かける男子高校生に勝手にパワーを貰い、男子高校生のおかげで生かされているエミチャンカパーナが、日本の国宝である男子高校生に敬意を込め、僭越ながら国宝に登録させていただき、様々な萌えポイント=国宝登録ポイントを妄想と偏見で解説していきます。
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朝7時半。学校内にはバットで空気を切る素振りの音だけ聞こえる。音の発信源、グラウンドに無造作に並ぶ坊主集団の中に彼はいる。
高校2年生初夏。引退前の先輩に気を使わなければならないと同時に後輩の面倒も見なくてはならない、大変な時期だ。(※1)
彼は飛び抜けて野球が得意なわけではない。中学時代は部員数の少ない弱小野球部であったため、自然と1年生のうちからレギュラーにはなれたが、進学した高校ではそうはいかない。
地区大会ベスト3には毎年入る、そこそこ強い野球部であったため、入部してからずっとベンチだ。おそらく今後も彼がレギュラーになることはない。(※2)
今後もベンチメンバーということはわかっていながらも、彼は決して手を抜かず、朝練も真面目に参加する。
それは彼が「野球が好き」であるからだ。(※3)
女子にはモテたい。彼女は欲しい。お洒落もしたい。
それでもどう頑張っても坊主は拭えないし、放課後は部活だし、厳格な集団行動の中で彼女を作る事は友達を減らすことに繋がる。(※4)
朝から晩まで仲間とひたすらに野球をする。
彼の3年間はそれに始まりそれに終わるのだ。
それでも彼は「野球が好き」と心から思っている。
たとえベンチでも、たとえモテなくても、野球をしている時が一番楽しいのは事実だし、野球をしている時の自分が一番好きだ
毎日辛いことが多いけれど、彼は今日も1日中野球のことを考え、朝早くから部活の練習に励む。
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※1 板挟みになっても反発したい若きエネルギーをぐっと抑える自制心。
※2 この年齢で既に「悲しみ」「絶望」を恋愛以外で経験し、受け入れている強さ。
※3「好き」だけで頑張れる素直な気持ちは男子高校生特有。
※4 自分を持っている様で周りの目を過剰に気にする脆さが儚い。
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男子高校生にとって野球が好きというだけで失う代償は明らかに多過ぎます。髪の毛、朝の時間、放課後、休日…とにかく個人の自由を奪われている気がしてなりません。
いまが一番可能性に満ちあふれ、なんでも出来るということはその渦中にいる時には気が付かないものです。ただ好きな対象が野球であったあまりに、気が付かないまま、狭く厳しい「野球部」という檻の中で3年間を過ごすことが義務付けられてしまいます。
一番自由な時期にあえて一つの道を選ぶ。
抑圧され、我慢を知っている男子高校生の顔つきは凛とし、美しいです。
その見つめる先に輝かしいレギュラーが待っている望みは薄くても、ひたむきに、ただひたむきに、頑張る。
これ以上の人間としての美しさがあるでしょうか。
子供である期間の最後の美しさとして、野球部男子は国宝に選定したいと思います。
・手を抜かず、引退まで野球部としての誇りを守り抜いて下さい。お願いです。
・引退して髪を伸ばす事が出来るようになったらMTRLで勉強しましょう。
・大学生になり、お洒落を始めて、方向性を間違えてDJになるのは辞めましょう。
■アーカイブ
第1回:『暇こそ輝き!ドリンクバーで無謀なチャレンジをする系男子高校生』
第2回:『初々しさがたまらない! 初めてのバイトは本屋系男子高校生』
第3回:『好きな事に一直線! 3DSが手放せないアキバ系男子』
第4回:『無意識のモテ男! 体育会系スイーツ男子』
第5回:『とにかくモテたい! 可愛い勘違い系男子高校生』
第6回:『青春の奴隷! 熱血野球一筋系男子高校生』
第7回:『隠れモテ男! 放送委員の地味系男子高校生』
第8回:『努力はきっと報われる! 予備校通い秀才系男子高校生』
第9回:『休日の裏の顔! ヴィジュアル系大好き男子高校生』
第10回:『目的は下心!サブカル入門系男子高校生』
第11回:『夏の風物詩!部活帰り黒こげ男子高校生』
第12回:『何故君はこっちにいるのか?! ジュノン系イケメンジャニオタ男子高校生』
第13回:『日本を救う通学中の男子高校生』
第14回:『熱き友情!クイズに捧げた若き秀才高校生コンビ』
第15回:『実は育ちがいい疑惑!?ちょいヤンキー風男子高校生』
第16回:『文武両道! 大学病院に突如現れた天使』
第17回:『3年間お疲れさま!部活を引退した野球部のその後』
第18回:『紙一重!おデブな彼が見付けた活路とは』
第19回:『昼下がりのショッピングセンターに出没!傍若無人なフードファイター』
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