こんにちは、歌人の鈴掛真です。5・7・5・7・7の短歌の作家です。
先月執筆した同級生の男子に片思いしていたエピソードが、「せつなすぎる…」と大好評でした!気づけば、もうすぐ今年の夏も終わり。
みんな、恋してる? 青春してる??
というわけで今回も、僕が体験したせつなさ満載の青春エピソードをご紹介します!
今回の舞台は、なんと海外。留学中に起こったまさかの出来事とは…。
連載【ゲイだけど質問ある?】、Are you ready? Let’s begin!
もう15年も前の出来事です。
高校時代、英語コースだった僕は、3年生の夏休みを使って、同世代の仲間たちと共に留学プログラムに参加しました。
行き先は、アメリカ。首都であるワシントンD.C.に3週間滞在します。
どんな景色や出会いが待ち受けているのか…様々な期待を胸に、いざ渡米しました。
この留学プログラムでは、日本から参加したメンバーと同数の、国際交流に興味を持った現地の高校生も選出されていました。
彼らとペアを組み、ベッドが2つ置かれた1部屋に2人で寝泊まりして、みんなで寮生活を送ります。
ペアの相手は、渡米前に実施されたテストとアンケートで、英語力や趣味の相性によってあらかじめ決められています。
僕がペアを組んだのは、ジョン(仮名)という男の子でした。
ジョンはさらさらのブロンドヘアがまぶしい身長180㎝を超すイケメン。
しかも成績優秀で、ハーバード大学を目指しているんだとか!
日本人のメンバーの女子たちは「男子の中でジョンが1番かっこいい!」と口を揃えていました。
アメリカのメンバーの中には、学校で日本語の授業をとっている子もいたけれど、ジョンは日本語が全く話せませんでした。
どうにか僕との仲を深めようと、ジョンはいろんな話題を持ちかけてくれたのだけど、ハーバードを目指すような秀才が話す英語はどれも難しくて、僕は聞き取るのがやっと。彼の話の半分も理解できません…。
僕らの心の距離はなかなか縮まりませんでした。
プログラム中は、アメリカの文化を疑似体験できる様々なイベントが行われました。
バーベキュー、ダンスパーティー、ハロウィン…そんな中、僕は音楽が得意なメンバーが集まった即席バンドに誘われて、ピアニストとしてビートルズのカバーをみんなの前で披露することになりました。そのステージを、ジョンが絶賛してくれたのです!
なんでも、大抵の教科は得意なジョンが、唯一苦手だったのが、音楽。
「君とペアになれたことを俺は誇りに思うよ!」
ジョンがそんなふうに褒めてくれたおかげで、僕らは急激に仲を深めていきました。
初めは、ぎこちなかった2人。けれど、プログラムが後半に差し掛かる頃には、僕とジョンのペアが1番仲良しと周りから言われるほど打ち解けていました。
異国の地で過ごす3週間の夏休みは、あっという間。
あと2日でお別れというとき、消灯時間を過ぎた真夜中に、ジョンから「少し話をしない?」と誘われました。
いつもは夜更かしなんかしない真面目なジョンが、珍しいな…。
僕らはジョンのベッドに並んで腰掛けました。
部屋の中は真っ暗。
窓から差し込む月明かりが、うっすらとジョンを照らしています。
夏の寝苦しい夜。ジョンは上半身裸でした。
目のやり場に困りながら、僕は彼の話に耳を傾けます。
社会情勢について、政治について、経済について…ジョンが語るのは相変わらず難しい話ばかり。単語の1つ1つを聞き逃さないように、僕は必死に聞き入っていました。
そうして、ジョンは少し言いにくそうに、こんなことを話し始めました。
「君は、同性愛についてどう思う?」
え…!! どうしてそんなこと…。
今でこそ同性愛が認められ始めてきたけれど、15年前はまだまだタブーとされていた頃。当時の僕も、同性愛者だと決して周りにばれないように生活を送っていました。
ゲイだということを同級生に打ち明けるなんて、もってのほか。
でも、社会について常日頃考えている聡明なジョンになら、打ち明けてもいいかもしれない…。
僕は一瞬、そんなふうに思いました。
「……うん、別に、僕は同性愛に偏見とかないよ!」
結局、僕はジョンに本当のことを話すことができませんでした。
ここで大きな決断をするより、あとの残り少ない時間を穏やかに過ごそう、と思ったのです。
「……そうだね、俺もそんな感じ!」
ジョンは、少し不器用な調子で笑いながら、そう答えました。
「話に付き合ってくれてありがとう。そろそろ寝ようか」
僕らは、それぞれのベッドに別れて、ようやく眠りにつきました。
それからは、瞬く間に時間が過ぎていきました。
お別れパーティー、ジョンと同じ部屋で過ごす最後の夜。
朝を迎えると、すぐに空港へ向かい、高校3年生の短い夏が終わりを告げました。
人づてにジョンの話を聞いたのは、それから1年ほど経った頃でした。
なんと、ジョンが自分はゲイだとカミングアウトしたというんです!
あのときジョンは、自分のことを僕に打ち明けようとしていたのかもしれません。
それには、相当な勇気が必要だったはず。
せっかく歩み寄ってくれていたジョンの勇気に、僕は気づくことができなかったのです…。
もしもあのとき、ジョンのような勇気が僕にもあったなら。
僕がもっと素直に、ジョンと向き合えていたら。
僕らは親友に、もしかするとそれ以上の関係になっていたかもしれません。
今はもう、連絡先すら知らない彼と。
さて、いかがでしたか?
「もしもあのとき、ああしていれば…」
大人になった今でも、そう考えることがたくさんあります。
人生は、一度きり。今年の夏も、一度きり!
みんなも、大人になったときに後悔しないように、今しかない青春の一瞬一瞬を大切に過ごしていこうね!
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