……またこのパターンだ。先週ヤった女子大生と連絡が取れない。LINEは未読、電話番号は知らない。最近このパターンが続いている。というか、大学に入ってからほとんどこのパターンな気がする。
いま連絡を取ろうとした女子大生だって、最初はクラブで向こうから声をかけてきたのに。どっかのラウンジでバイトしているとか言っていた気がする。それだけあってやはり顔は可愛かったのは覚えている。近くに住んでいるその子の家でセックスをしたのがちょうど1週間前。暇だから飲みにでも行こうと誘ったらこのザマだ。
腑に落ちず嫌な気持ちになっていると、やっと1件のLINEが。
―「はるき、今日ひまー?」(リナ)
レスが来たのかと期待したが、LINEの主は、同じサークルのリナからだった。
リナは新歓の時からの知り合いで、その時からやたら俺へのアプローチがしつこい。
同じ講義だとわざわざ隣に座ってきたり、サボるとわざわざ電話してきたり、何かと彼女面をしてくる。面倒だからリナと話す時はつい適当になってしまって、向こうの話に笑顔で相槌を打つだけになっている。(1)
そんなリナから恐らく飲みの誘い……。
いつもだったら適当な理由で断ってしまうが、今日はこのモヤモヤした気持ちを抱え1人で過ごすのもなんだし、応答に答えた。
―「暇~。飲んでんの?」
―「ううん、家。え、暇なら飲も~!」(リナ)
しくった……。この流れは断れないし、これから店を考えたり、人を集めるのも面倒くさい。リナとサシか……。話すこと特にないな。
まあでも1人で帰るよりはと、気持ちを奮い立たせる。
ゆうてリナは、顔は可愛いし、スタイルも良い。サークルの3男からの人気は抜群だ。
―「おけ!飲も! 渋谷の○×水産でいい?」(2)
―「もち! 渋谷だったら30分で着く~!」(リナ)
店まで歩いている間にもう一度LINEを確認したが、リナ以外からは連絡がない。今日はそういう日だ。
数分遅れて到着したリナは、髪をしっかり巻いて、こんな店なのにピンヒール。きつめの香水まで付けている。
「え、なんか昼と服違くない?」
講義で見た時は違う服を着ていた気がするので、思ったまま口にした。
「すごいね! よく気付いたね! なんか気合い入れてるみたいでウケるよね~(笑)」
特にウケないが、笑う。
「いいじゃん、いいじゃん!」
ウケるとは言わない。(3)
そこから何を話したかは本当に記憶がない。俺は酒を飲むと、結構話すほうらしい。
気が付いたらリナの家で朝を迎えた。こうなることはサシ飲みの時点でわかっていた。
たぶん今日は目の前の子とヤるな、という予想はほぼ当たる。
時計を見たらもう少しで2限の時間。そろそろ起きなきゃと伸びをしたら洗面台からすでに化粧をして、髪を巻いたいつものリナが出てきた。
「あ、おはよ~。けっこう酔ってたけど、寝れた?」
「うん、急に泊まってごめん。俺昨日のこと正直全然覚えてなくて……」
「まじ! めっちゃ酔ってたよ! 帰りのタクシー爆睡だったし!」
「わ~ごめん。なんか俺、変なこと言ってなかった?」
あくびをしながら聞くと、リナは笑いながら
「はるきって普段あんまり喋んないけど、サシ飲みだと結構喋るんだね!なんか昔の話とか、はるきのこと色々知っちゃった~。高校の時の元カノが可愛かったとか、初体験が14歳とか(笑)」
「うわ、めっちゃはず!(笑)」
2人で笑いあって、一緒に大学にも登校した。
こう見るとリナも悪くないな、なんて思ったりした。今日の2限は同じ講義なはずだから、一緒に校舎に入ろうとしたら、リナが急に
「あ、ごめん! 今日ちょっと用事あって…… 代返頼んでいい?」
さっきまでそんなこと言ってなかったけど……と、ちょっとガッカリしている自分までいる。もしかしたら昨日の今日でリナに対して特別な感情を持ち始めているのかもしれない。
「え~、俺もサボりたいじゃん」
「ごめんごめん! 次はウチに頼んで良いから!」
「じゃ、来週はよろしく。おつかれ~」
他の男友達をすぐに見つけて、隣の席に座った。
「おまえ、昨日と服同じじゃね!?(笑)」
早速いじられるけど、「気のせいじゃね?」とかわす。(4)
朝帰りの多幸感を噛み締めながらの講義も悪くない。
リナが3男の先輩と付き合っていることを知ったのは、それから1週間後だった。
(1)意図せず聞き上手になっている。イケメンならば、女子の話をニコニコ聞いているだけで、女子はプチ勘違いしてしまいその気になってしまう。
(2)だらだらとLINEをせず、短文かつアポ確約をすぐにしてくれることで、セックスチャンスを逃さない。こちらも面倒くさがりな性格が功を奏し、意図せず女子をリードしている。
(3)最初の会話で、女子の服装や髪型をホメているのは、ポイントが高い。ましてやサシ飲みやデートの場で、向こうは気合いをいれてこないはずはない。目の付け所がヤリチン。
(4)女子とヤった話をすぐに男友達にバラさないのはヤリチンの鉄則。女子からしてもあらぬ噂を立てられる心配がなく安心。ただし秘密主義故に周りから固めることが出来ず、ヤった女子を逃す原因にも。
特徴:自我の目覚めと共にモテる人生を歩んできてしまったため、モテる為のテクニックや、会話、エスコート術などを習得しないまま大学に入学してしまった。大学デビューに気合いを入れている組は次々と彼女を作る中、特定の彼女ができない大学生活を送っている。
天性の顔の良さで女子に困らないが、その後のフォローや、デートやセックスのつまらなさから、女子からやり捨てされることが多くなり、不覚にもヤリチン化。本人は明確に振られることもないし、何しろ新しい女子は次々に現れるため、自分の欠点に気付けていない19歳。
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