大学2年生。サークルには所属していないし、彼女もいない、バイトばかりの日々。東京の生活がこんなにも暇だとは思わなかった…。
高校時代はイケてるメンバーに属して、そこそこオシャレというだけで女に困ることはなかった。地元の田舎は娯楽も情報も少ない。今思えばスクールカーストが高いというだけでライバルの母数が圧倒的に少なかっただけだった。
きっと東京に出ればもっと世界は広がるはずと夢見ていた。
何かやりたいことがあるわけでもなかったけれど、絶対に東京へ行くのだと思った。
上京さえできればなんでもよかったから、迷わずFラン大学に入学した。
この都会の中で、出会いは増えると思ったし、女に困ることなど想像もしていなかった。
しかし、そんな考えは甘かったと上京1ヶ月もしないうちに思い知らされる。
東京では大学名と、顔が全てだ。いくらFラン大学の中でイケていても意味がない。そもそも大学内に女は少ないし、大学名の時点で合コンメンバーからも除外される。顔だってサロンモデルのスカウトを受けるほどのイケメンでもない。
肩書きでも見た目でも勝負できない、そんな自分に黙っていれば出会いがあるほど東京は優しくない。
そこで俺がたどり着いたのが「インスタナンパ」だ。
インスタでの勝者は大学名でも顔でもない、いかにオシャレな雰囲気の写真が撮れるかだけだ。これなら俺にだって勝負できる。
顔だって髪型と角度で隠して服と加工だけにひたすらこだわった。バイトくらいしかすることがない俺にはぴったりな暇つぶしだ。
バイト代を稼いではインスタ映えする洋服を買って加工して…を地道に繰り返し、着実にフォロワーを増やしていった。リアルの友達にもフォローしてもらい、あっという間にフォロワーは2,300人を超えた。
このレベルのフォロワーを得ることくらいは簡単だ。簡単な割には知らない女からのフォローやいいねも増えてくるから、一番美味しいフォロワー数だ。
別にインフルエンサーになりたいわけではない。出会いツールとしてのインスタだ。これくらいが丁度いい。
インスタナンパの極意はいかに有名かよりも、安心感があるかが重要になってくる。2,300人フォロワーがいれば、「友達もいて、普通の学生生活を送っているオシャレな大学生」というイメージを手に入れることができる。誰も出会い目当てのアカウントだとは思わない。女と出会うための戦闘力としては十分だ。
あとは自分にいいねしてきた女へのDMとハッシュタグ検索を欠かさない。
「#オシャレさんと繋がりたい」「#ナイトプール」「#彼氏募集中」は鉄板だ。
相手の女は自分よりもフォロワー数が少ないことが条件だ。高みは目指さない。相手も普通の女であること、そしてフォロワー数でこっちが優位に立てなければならないからだ。(1)
かといって2桁台のフォロワーや、異常にフォローが多く、自撮りが多いといった釣りアカウントは避けてDMを送る。
DMも明らかな出会い目当てだと思われないよう、投稿写真についての具体的なコメントや共通の趣味っぽい話題から入る。意外と頭を使うところではあるが、結局は数打ちゃ当たれ精神で、暇なときにDMを送りまくれば誰かしらは引っかかる。(2)
実際に会う約束を取り付ければこっちのものだ。相手からすれば「オシャレな投稿が多くて自分よりフォロワーが多い」というだけで俺に対しての安心感フィルターがかかっている。チョロい。
ただ実際に会うとなると賭けが生じてくる。相手の女がブスの可能性もあるからだ。それがインスタナンパの怖いところでもある。男よりも女の方が加工技術は高い。インスタとは全く別人が待ち合わせ場所に現れることもある。
そういったリスクもあるから、出会って即ホテルといったデリヘルのような明らかヤリ目的な約束はしない。(3)
まずはサシ飲みの約束を取り付ける。実際に目の前に現れたのがブスだったらチェーンの安居酒屋割り勘から防音個室の漫画喫茶といったトータル3,000円コース、期待通りの美人だったらオシャレなカフェダイニング奢りからの自宅持ち帰りのトータル5,000円コースと常に2パターンを用意しておく。(4)
どちらのパターンでも1回の出会いあたりの金はあまりかからないし、どちらのコースにするかその場で舵を切れるように、予約無しで店に入れる平日の早めの時間帯に会うことは徹底している。
東京では夢は見れなかったけど、インスタがあれば夢を見ることができる。しばらくはこの方法で女にも困る事はなさそうだ。
(1) あえて1万フォロワーを目指さない。出会いツールとしての運用を徹底している。自分はどのポジションをターゲットにし、自分をどう見せれば相手に響くかをしっかりと考えている。もはや経営者の考えの持ち主。
(2) ちょっとやそっとじゃめげない男らしさと精神力。結局ナンパはタイミングなので、返信がなかったことにいちいち落ち込んでいたら精神が持たない。
(3) リスクヘッジをとった行動。またハナから美人ばかりを期待していないため、精神的なダメージも少なくて済む。
(4) 予め自分の中でコースと予算が設定されているので、出会った後に無駄な金はかからないし、スマートに相手をエスコートすることができる。お互いwin-winである。
名前:直斗
経歴:関西方面の田舎街出身。地元の一般企業に勤める父と専業主婦の母、まだ高校生と中学生の妹が2人の5人家族。高校時代には激しい喧嘩や警察沙汰は起こした事がないが、いわゆるマイルドヤンキーだったためスクールカーストは上位。クラスで3番目くらいに可愛い彼女は作れる生活だった。何も考えずただ東京に憧れて上京。暇すぎて深夜のコンビニとファストフード店のバイトを掛け持ちしている。
趣味・特技:買い物、ヘアセット、インスタ加工。
特徴:学力は低いが空気を読む力は高い。インスタ運用も丁度いい手加減と時代の流れを掴み、自分の理想のアカウントへと成長させていった。将来地元の先輩と起業して成功するタイプ。関西出身であることと、マイルドヤンキーで基本集団行動だったこともあり、コミュ力は高め。出会って即ホテルに連れ込まなくても初対面で場をつなぐ会話くらい容易に出来る。
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