多くの男女が行き交う街、東京。
しかし東京という街はなんとも不平等なもので、一度も女経験がない「童貞」がいれば、経験人数は覚えていないという「ヤリチン」も存在する。
こちらで紹介するのはそんな「ヤリチン」側の人生を歩む男達。
ヤリチンが普段どのように女を落としているのか、テクニックを紹介する。
平日夜の渋谷センター街。
お酒と濃い味の食べ物が合わさったようなべたつく匂いが充満するこの通りは、今日が何曜日で何時なのかといった世間一般の時間の流れからは切り取られ、いつだって生暖かい喧噪に包まれている。
路肩で潰れるケバい女、背の高い外国人の客引き、何かを叫ぶサラリーマン、看板を持った居酒屋の店員、腕を組み歩くカップル…そんなセンター街の混沌を形成する登場人物の中の一人として彼はそこに存在している。
大学1年生の彼はチェーンの安居酒屋から出てきたところだ。
今日は同じ学部の1年生数十人規模での飲み会。メンバーは全員友達というわけではない。顔がいいか、オシャレか、ノリがいいか、なんとなく学内で目立つメンバーが自然淘汰で厳選されている。 (1)
この手の飲み会の幹事をやるタイプは決まって高校時代は田舎でヤンチャしていたタイプだ。はっきり言ってお山の大将そのもので、東京の大学生活そのものに浮かれきっている。
彼はこの手のタイプではない。中高大と一貫校の内部生なので、改めて大学デビューする必要もないし、渋谷だってただの通学路に過ぎず何千、何万回と行きつくしている。
高校から大学は地続きのもので、そのままの生活がただ続いているだけ。
だからこの手の飲み会には少し冷めた目線で参加してしまう。
同じ内部生の友達も数名今日の飲み会には参加しているが、悲しいことに皆一様にアルコールに弱く、浮かれてる大学生側の一部と化してしまった。
センター街の一角を占拠する彼らの集団は酔っ払って倒れ込むもの、それを介抱するもの、二次会の店へ電話するもの、集団をまとめようと大声をあげるもの、終電を必死で調べるもの、それぞれの役割を全うしながら「しょうもない大学生の輪」を作り上げている。
もうずっと東京育ちでこのような大学生を身近に見てきた彼にとっては、この光景に自分が溶け込んでしまうのがうすら寒くも感じてしまうのだ。
その寒さに染まらぬよう、彼は自分のプライドを掛け、逃げるように単独行動を開始する。
彼は輪の中にいる『必死で終電を探すでもなく、二次会へ行くテンションでもなさそうな、ただなんとなくそこにいる帰るタイミングを逃してしまっている女子』を見つけ出し、声を掛ける。 (2)
この手の女子は何かきっかけが欲しいのだ。誰かに強引に二次会に誘われれば着いていくし、何人か帰る波が出来ればそれに合わせて帰路に着く。
誰もが自分のことしか見えていないこの手の飲み会では男女関係なく冷静な方が浮いてしまって損をする。
その心の隙間に彼は入り込む。
「ねえ、このあとどうするか決めてるの?」
きっかけが欲しい女子とわかっていながらも、まずは優しい言葉で彼女の意見を聞く。
彼女が曖昧な返答しかしないことは計算済みだ。
「ちょっとさ、大人数疲れちゃたから…もしよかったら二人で飲まない?」
もちろん彼女は少し戸惑うが、夜を持て余していた彼女がイケメンからの誘いを断るはずもない。
二人は足早に道玄坂へと歩き出す。
誰もが自分のことしか見えていないセンター街の喧噪の中では、誰も彼らの単独行動には気が付かない。
こっそり抜け出し、道玄坂上の隠れ居酒屋で二人だけの二次会を開始。 (3)
やはりチェーンの居酒屋で大人数の飲み会よりも、オシャレな飲み屋で女子と二人の方が会話も弾む。 (4)
終電の時間などあっという間に過ぎ、二人に残された選択肢は一つ。
店を出る頃には手を握り、円山町に消えていくのであった。
(1) 何はともあれ彼はイケメンだ。自分で努力せずとも自然と目立つポテンシャルを持って生まれた。
(2) きちんとターゲットを見定めることが重要だ。可愛いから、目立っているからというだけで女子に声を掛けては、イケメンに舞い上がった女子に逆に2次会へ強引に連れて行かれる可能性がある。自分と同じ冷静な女子を探し出す。
(3) まだ周りの同級生が知らない様なお店を知っているのは高校時代から遊んでいたから。この歳でスマートに女子を誘導すること出来ると、まだ何も知らない大学入学したての女子はそれだけでときめく。
(4) 大勢の飲みの場で必死で話したり、盛り上げようと張り切り過ぎる男子はそれだけで「チャラい」と認定されてしまい、女子の中では悪い意味で有名人になってしまう。そんな悪目立ちする男子とは誰だって寝たくない。あくまでみんなの前ではあまり目立たない方が女子ウケは良い。
趣味・特技:テニス、ビリヤード、ダーツ
特徴:サロンモデルの経験もあるイケメン。少し冷めた性格で周りを俯瞰して見る癖がある。
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