合コンだって、同窓会だって、マッチングアプリだって…俺は最強にモテる。そう、この大学名があれば…。
大学3年の夏。来年は就活も本格的に始まってしまう。だから俺は内心焦っていた。
髪型に自由が効く今しか新しい出会いは望めない。
自分で言うのも変だが、俺は確実に雰囲気イケメンだ。大して素材はよくない。それっぽい服装とそれっぽい髪型と大学名だけで女と繋がれている。(1)
高校まではそれこそ目立たない陰キャだった。彼女もいなかったし、女から言い寄られた事はおろか、話しかけられた事だって少なかった。
一応四大の付属私立に通っていたけど、偏差値はそこそこ。
そのままエスカレーターで大学に行ったとしても大したブランド力もない。就職だってきっと普通の企業しか狙えないし、何よりこの先もずっとモテるはずがなかった。
見た目地味、性格も地味な俺が努力で補えるのは、『肩書き』しか残ってなかったのだ。
周りのクラスメイトがどうってことない付属大学に内部推薦で進み、自動車学校に通う高3の夏。
俺は誰とも遊ばず塾の自習室にいた。高校最後の夏を中途半端な遊びにかけず、俺は有名大学の肩書きを手に入れる為に一心不乱で勉強をした。(2)
結局浪人までしてしまったのは誤算だったが、あの時諦めなかったから今の女に困らない生活がある。
俺が浪人中、新歓だのサークルだの一人暮らしだの、金髪にして浮かれていた奴らは、結局今はどこにでもいそうな適当な女と付き合いながら、大したことない企業に内定を貰って喜んでいる。それで満足する人生ならそれでいいと思う。
俺はそんな高校の同級生のインスタをラブホのベッドの上で寝転がりながら見ている。
高校の同級生のインスタを見るたびほくそ笑む自分がいる。
部屋にはさっき出会った名前も知らない女がシャワーを浴びる音だけが響いている。
大学に入ってから何人と寝たかわからない。
もちろん童貞だったけど、そんなものは入学早々、サークルの新歓帰りに2つ上の先輩に卒業させてもらった。もしかしたらこの人と付き合うのかもしれない、なんて事も当時は思ったけど、翌日何事もなかったかのように大学では顔を合わせ、LINEは無視された。
女なんてこんなもんかと思った。(3)
マッチングアプリに大学名を書いた途端、マッチし出すようになったし、SNSでも大学名を書けばDMで女が釣れるようにもなった。
どんどん個人情報は晒していくべきだと思った。
合コンだってそれなりの女がやって来るし、高校の同窓会では女の方から話しかけて来るようになった。大して仲良くもなかったのに。
全てはあの高3からの2年間のお陰だ。
人生のうち、たった2年間本気で勉強しただけで俺は人生で女に困らない切符を手に入れた。
ただ、俺は彼女がいたことが無い。
毎回一夜限りで終わり、その後もセフレへと繋がらない。
本当に俺には大学名という肩書きしかないらしい。
顔もそこそこ、会話力もそこそこ、テクニックもそこそこ。
本当に俺はそれで納得しているのか?
たしかに今は、あの時期の受験勉強が人生で一番頑張った事と胸を張って言える。
ただ来年はどうだろう?就活ではそれが言えるのか?
社会人になっても大学名だけで女からモテるのか?黒髪短髪にしたら俺はフツメンにも程がある。
考えようにも考えたくない。だから俺は焦っている。
あと1年のうちに本気で彼女を作りたいが、じゃあ今シャワーを浴びている名字も知らないあの女が彼女になってくれるのか?
俺は、この先のステップがわからない。
(1)自分の見た目のレベルを客観視出来ているのはとても良いこと。また顔はそこそこでも、それなりの身なりを保ちモテようとする努力は大切。この世のほとんどのイケメンは雰囲気イケメン。まずは雰囲気から作り込もう。
(2)自分で定めた目標に対して全力で打ち込めて、きちんと夢を叶えるタイプ。理由はなんであれ努力する姿は男らしくて惹かれるものがある。
(3)諦めが早く、さっぱりした性格で事後がめんどくさくない。女から見ても非常にヤりやすい男。
趣味・特技:酒を飲む
特徴:いつも物事の本質に気付くのが少し遅い抜けてる性格。しかし気が付いてからはもの凄いエンジンがかかり、誰よりも努力する。学校の試験は一夜漬けで乗り切るタイプ。なぜ自分に彼女が出来ないのかまだ本質に気が付いていない。
■前回のヤリチン
■東京ヤリチン白書
■ライタープロフィール