数年前の夏、私はスクールバッグに数枚のメモを忍ばせていた。
真夏の街、何かを感じさせるような空気のなか、メモに字を走らせた。
そして、足も走らせた。
「よかったらこれ…」
時は2017年。マドカ・ジャスミン、御年21歳。
初の逆ナンは中学生時代(いわゆるJCだね!)で、今年で7年目。
7年目(重要)。
何を隠そう、当時から大学生や社会人に逆ナンを遂行していたのだ。今思えばただのテロである。
今も気になった異性に自分からアプローチはするものの、ハンターの如く好みの男性をナンパすることはほぼなくなった。
ストリートは勿論、スタバやカラオケの店員さん、電車で一緒になった好みの男性に声をかけていた当時のアグレッシブさはもはや尊敬の域である。
あれから7年目の夏、当時の私が望んでいた以上の日々は送れているものの、恋人はいない、好きな人もいない、気になる人も、セフレもいない。一応21歳の女子だぞーーーーー! 馬鹿ヤローーーーーーー!
5月に彼氏ができて、それに関する企画提案もしてたのに秒で別れた。浮かれすぎるの、ダメ、ゼッタイ。
まだ“若い女子”フィルターがかけられる夏だ!1人で過ごしてもいいけど!
やっぱり男が欲しい!
しかし、この世の中、「欲しい!」と言ったらすぐに手に入るほど甘くありません。何もかも自分で、自分の力で掴み取らなければいけない。
な・ら・ば
さあ、ショータイムだ!
メモにペンを走らせていると、あの夏の高揚感を思い出すと同時に不安が湧き起こっていた。
何を隠そう、あの頃は制服姿で逆ナンをしていたのだ。勇気を出すタイミングを完全に間違えてるし、返信してきた男性たちも馬鹿野郎にもほどがある。
それほどまでにJK…というか、チートアイテム・女子高生の制服の威力ってハンパなかった。
しかし、今やもうそのチートアイテムを所持してない。
言うなれば、四次元ポケットを持たないドラえもんと同じだ。ん? ビジュアルはまんまドラえもんだって? やかましい!
チートアイテムは無かろうが、この7年で培った経験もある!何も怖くない!
そう1人、渋谷の街中でメラメラと炎を燃やしつつ、選んだ今回のステージはこちら!!!!
なぜ軒並み揃ってファストフードばかりかというと、どこの店舗が一番早く(fast)私を食べてくれるのかをダービーするため。
スタバの店員さんが一番タイプ率が高いので、またの機会にカフェ編もどうぞおねしゃす! 佐野編集長!
はたして、ファストフードのスピードスターはどのお店なのか…Ready Go!
一発目はみんな大好きマク○ナル○。
ここ最近逆ナンなんてしてなかったのもあり、光り輝くMの字に近づくたび、緊張のせいか心臓がどんどんうるさくなる。何なら吐きそうだった。
そんなチキンハートを無視して、店内へ。
男性店員はひとり。お昼なので、客列は長い。
この場合に懸念されるのは、前のお客さんたちによっては男性店員と対面できないということだ。
ひとつ前のお客さんが男性店員に呼ばれる。となると、必然的に女性店員の前になってしまう…かくなる上は!!!
このカードのオープンにより、無事男性店員の前へ立つ。
しかし、久しぶりの連絡先を渡すという行為に完全にチキった私。
普通なら、「これよかったら…」などの分かりやすい一言と共に渡すのに、お札と折ったメモを重ねて渡すという中途半端な渡し方をしてしまった。ァア!
ともあれ、久々の行為と高揚感にその昔を思い出した私は俄然やる気に。
意気揚々と二軒目へと向かうのだった。
場所を移して、ここは道玄坂。
様々なファストフード店がひしめく道玄坂でまず選んだのは、モ○バーガー!
マクドナルドとは違い、小さめの店舗で客列もほぼいない。その上、レジには男性店員のみ。
上がったテンションを隠しつつ、すかさずレジへ移動。
さっきの反省を生かし、今度はちゃんと「メモを渡してるアピール」して渡そうと、お会計ではまだ動かない。
お会計から商品提供までの僅かな時間、内心ニヤニヤが止まらなかった。何でもそうだ、このジリジリと待つ時間が一番タギる。タギりまくる。
そして、商品を受け取り…呟いた。(若干の上目遣い)(キャラじゃない)
店員さんは戸惑いつつも受け取ってくれた! やったぜ!
昔の感覚を取り戻しつつあるのは間違いなく、再熱した想いを胸に三軒目へ足を運ばせた。
道玄坂を上り、フ○ッシュ○スバーガーに到着。
お昼を過ぎたのと、立地もあってかお客さんも少なく、店内はゆったりとしている。
肝心の男性店員は…いた!!!!!!
またもやレジには男性店員のみ。ツキまくりかよ! ずっと私のターンなのか?!
早速レジへ向かい、わざとらしくメニュー表を指でなぞる。
最初の緊張なんてどこへやら、私は完全にこの状況を楽しんでいた。
ファストフード店では珍しい野菜スムージーを頼み、商品を用意する店員さんの背中を見ながらまだかまだかとその時を待つ。
熱い視線を送っていた背中が振り向き、商品が手渡されると同時にメモを渡した。
もちろん、「よかったら、これどうぞ」と余裕の笑顔も一緒に。
満足げに店を後にする私は笑顔を通り越し、
今度は道玄坂を下り、TOHOシネマズ側のロッ○リアへ。
レジが道路の対面になってるせいか、人が並んでなかった二軒目、三軒目と違い、客列もそこそこ。
若干尻込みをするも、勢いだけはJK時代に戻った私に怖いものなんて何もなかった。
レジには女性店員2名と男性店員1名。
各店員の前に並ぶスタイルのため、何の障害もなく男性店員に挑める。
もちろん男性店員の列に並び、今か今かと待ち、慣れた手つきで渡した。
今回は女性店員がいたのもあり、声は抑えめで目で伝える。目力が強すぎたのはきっと気のせい。
そのスピーディーさ、
仕事人は最後のメモを渡すべく、センター街へと向かうのだった。
やってきました! みんな大好きセンター街!
意外にも、この日初のセンター街にあるファストフード店。選ばれたのは、ファー○ト○ッチン・○ェンディ―ズでした。
「最後の締め括りや…ドカンと当てるで…」と下手したら、涎をダラダラと垂らす勢いで路上からレジを見る。
………あれ、おかしい。
レジに立つのは明らかにカタカナのネームプレートを持つであろう男性店員だった。
最後の最後で
がぶち込まれる展開に笑わずにはいられない。
てか、こんなテコいれ入れるなら、せめて三軒目とかにしてよ! 最後の最後でこれはズルすぎるわ!
とは言っても、アドレナリンが出まくり、いかに男性店員に連絡先を渡すかしか頭になかった私は、意を決して異文化交流に挑んだ。
自分の順番が来て、お決まりの流れでメモを渡すと、そのメモを店員さんはジロジロと見て、こう一言。
「コレ、ゴミデスカ?」
異文化交流終了。
「違う! あなたに!」と小声。且つ、ジェスチャー付きで伝えて何となく理解してもらえた。(と思いたい)
これにて、久しぶりの逆ナンは終了!
最初の店舗でのぎこちなさはどこへやら。終わりのほうは昔の自分が乗り移ったかのように慣れた手つきで渡していた。
スポーツ選手と同じように感覚は忘れられないのかもしれない。終わった後の爽快感ときたらこの上なかった。
気分はまるで24時間TVのゴール直後のマラソンランナー。すっごいよ! 達成感♪
LINEの画面を眺めながら、顔が綻ぶ。早く返事来ないかなあ、まだかなあ、こんな待ち焦がれる時間も逆ナンの醍醐味だ。
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
入れ食いだったJK時代は過去の栄光だった。
一向に来ないLINEの通知と何だかんだ言って過去の栄光にしがみついてた自分に絶望した私は、希望を求め、鰻重を嗜みに向かう。(土用の丑の日!)
行動基準が本能なので、絶望が癒されるだけどころか、メモを渡したことさえ、鰻重によって綺麗さっぱり忘れてしまった。1・2の…ポカン!だ。
鰻重に満足し、帰路に着く。その時通知が、
ズコー!と音を上げてこけそうになった。そもそも返事前にホーム投稿(記事とか載せてる)を見るなんて、念入りすぎる。
予想外の返事内容でしたが!! 栄えある色んな意味で早いファストフード店は、
でした!!!
結局、この人以外からは連絡は来ず、最初の一言のせいで連絡をくれた人にも興醒めしてしまった。
面倒くさい女心である。
今回は不発に終わったが、アクションを起こした自分を褒め称えたい。
夏は短い。はたしてこの夏、私は男性の肌に触れられるのか。
ただ一つ、これだけは分かる。
ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!
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