書籍化が決定したMTRLの人気連載『ギャル男でもわかる政治の話』。発売に先駆け、書籍の内容をチラ見せ中!
これまで、【憲法とは「ジャンプ三原則」である】【年金制度はもうすでにオワコンである】、をお届けしましたが、今回は、選挙制度について。
選挙より国民的イベント!?のAKB総選挙が、実は本当の選挙の縮図だったってどういうことですか、おときた議員!!
これまで、選挙の重要性をくり返し強調してきたけど、実際僕らが投票所に行ったとき、渡された2枚の投票用紙にはなにをどう書けばいいだろう。ここでは、選挙の歴史から現在の選挙制度までまとめて総ざらい。これで選挙番組が5倍楽しくなること間違いなし!
おときた:念のためもう一回聞くけど、ふたりは選挙って行ったことある?
レン:そんなもの、一切ありません!(キリッ)
トシキ:おーい、自慢気に言ってどうする! でも、オレもないです。
おときた:うん、そうだよね。知ってた(笑)。では問題です、日本で選挙がはじまったのはいつでしょう?
レン:1192年?
おときた:えー、「いい国つくろう鎌倉幕府」だね? そう、御家人と呼ばれる武士たちから信頼の厚かった源頼朝は、選挙によって初代将軍に選ばれて……って違うわ! ちなみに言うと、鎌倉幕府の設立はいまは1185年だってことになってるよ。
トシキ:えー! そうなんですか、知らなかった……。
おときた:で、そのころはまだ独裁国家だよ、日本は。選挙なんて影もかたちもありません。
レン:じゃあ、いつなんですか?
おときた:選挙がはじまったのはごく最近で、1890年。いまから120年くらい前のことだね。では第2問、トシキくんがその時代にタイムスリップしたら、選挙に参加できるでしょうか?
トシキ:できない!
レン:じゃあ、できる!
おときた:じゃあってなんだよ! 正解はトシキくん。
トシキ:よっしゃ!
おときた:当時は制限選挙といって、一定以上の税金を納めていないと選挙ができなかったんだ。
トシキ・レン:あー! 学校でやったー!
おときた:そうだね、教科書にも載っているように、当時は一部のお金持ちしか選挙に参加できなかった。ちなみに、これは現代のとあるシステムと同じなんだけど……。
レン:なんだろう?
トシキ:オレ、関係ありますか?
おときた:うーん、なくはないかな。アイドルは好きだったよね?
トシキ:はい!
おときた:じゃあ、話が早い。選挙は選挙でも、AKB総選挙だ。
トシキ:AKBって、オレが好きなあのAKB!?
おときた:そう、ここからはAKB総選挙にたとえて、選挙のしくみを説明しよう。
トシキ:やったー!!
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■おときた塾の学び
最近まで、選挙に行ける人は一部のお金持ちに限られていた。
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おときた:AKB総選挙では、CDを買った人しか投票できないよね? 昔の制限選挙というのは、まさにこういうシステムだった。
トシキ:でも、投票券をひとりで何枚ももらえるわけじゃないですよね?
おときた:もちろん、そこはAKB総選挙とは違う。でも、お金を持っている人が強いのは一緒かな。
レン:お金持ちじゃないと投票ができないなんて、そんなの不公平だよ!
おときた:そうだね、それにふたりは、AKB総選挙のために100万円以上注ぎ込んで、AKBのCDを1000枚買うような人と仲良くなれる?
レン:無理ッス!(キッパリ)
トシキ:ひどいな! でも、ちょっと引いた目で見てしまうかなあ。
レン:むしろ、そんなお金あまってるんだったら僕にください!
おときた:それは直接言ってくれ(笑)。お金持ち、つまりAKB総選挙でいうところのCDを1000枚も買う人の感覚は、庶民とはちょっと異なることはわかるよね。そんな人たちしか投票できないしくみだとどうなるか。
トシキ:でもAKBにとっては、そういう人たちはとても大事な支援者なわけだから、きっと優遇したくなるんじゃないですか?
おときた:そう、だから実際、お金持ちだけしか投票できないと、どうしても政策が偏ってしまうんだ。さらにいうと、当時はお金があろうがなかろうが、投票できない人もいてね……。
レン:え、誰なの?
おときた:女性。「女は政治に口出しをするな」と本気で言われていたんだよ、信じられる?
トシキ:マジで? そんなの差別じゃん!
おときた:だから、選挙権がなかった人、つまり庶民や女性は政策上不公平な扱いを受けていて、それを解消するために、選挙権を得ようと粘りづよく戦い続けてきたというわけなんだ。
トシキ:偉いなあ! それじゃ、選挙権はいつみんなに行きわたったんですか?
おときた:庶民に行きわたったのは1925年だね。男性だけなんだけど、普通選挙が解禁されたのがこの年。女性も可能になったのはそれからしばらく経ってからで、戦後だ。
レン:へー。結構、最近なんだね。
おときた:そう、女性も選挙権を持つようになってからまだ70年くらいしか経っていない。いまじゃあ活躍する女性の政治家をよく見かけるようになったけど、戦後までは女性の政治家はひとりもいなかったんだ。
トシキ:そもそもなんでお金持ちしか投票できなかったんだろう?
レン:ふん、どうせその人たちのお金目当てなんでしょ!
おときた:うーん、というよりも、当時、お金がない人に足りていなかったのはなんだと思う?
レン:プライド?
トシキ:おい! 謝れ!
おときた:正解は「教育」だね。「お金がないと学がない」と言われていたんだ。
トシキ:だからって、投票権がなくてもいいことにはならないよね。
おときた:加えて当時はまだ、国に最小限の機能しかなかったんだ。そのために、政治はお金持ちだけにしか関係ないと思われていた。でもいまのように病院とか年金とかの制度ができてくると、政治が庶民にも関係するから……。
レン:オレたちの生活に口をだすんだったら、オレたちも参加させろって言いたくなるなあ。
おときた:その通り。そういう経緯があって、いまみんなが投票権を持てているというわけなんだ。
レン:それなのにオレ、一回も使ってないのか……。
おときた:いまの20代はとくに選挙行かなくて、投票するのは3人に1人くらいだね。普通選挙が実現した当初は、やっぱり投票率も高くて80%以上だったけど、ずっと下がり続けているんだ。
トシキ:オレが投票に行かないのって、自分に関係がないと思っちゃうからなんだけど、投票に行く60代の人たちからすれば関係があるってことなのかな?
おときた:そうだね、あと数年で年金をもらえるかどうかが決まる世代だから、彼らにとっては切実。いっぽうで、若い人たちが関係ないと思ってしまうというのも仕方ない部分があって、日本は若者や子ども向けに使われている予算が、先進国の中でもめちゃくちゃ低かったりするんだ。
レン:そうなの!?
おときた:だって、AKBだって、CDを買ってくれるファンと買ってくれないファンだったら、どっちが大切だと思う?
トシキ:そりゃあ、買うファンだよなあ。
レン:じゃあ、オレたちがもっと選挙に行けば、オレたちのための法律や予算もつくってくれるということですか?
おときた:イエス、その通り!
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■おときた塾の学び
・お金持ち以外に、女性も戦後まで投票できなかった。
・政治家は、投票に行かない若い世代を優遇しづらい。
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