いわゆる「偶然」っていうやつを運命みたいに特別なものだと信じてみたい。楽観的かもしれないけれど、どこか懐かしい優しい感覚。例えば、季節を知らせる風の匂いとか、渡せなかったラブレター、まるで幼い頃にタイムスリップしたような温かさ。
私の名前は佐々木葵。都立家政大学に通う20歳。ちなみに彼氏いない歴=年齢の恋愛初心者です。中・高と女子校で過ごし、大学生活こそは彼氏を作るために共学の大学へ行くんだと張り切っていたのに、結局通う大学は女子大に…。
恋愛経験こそない私だけど、一度だけ、胸を焦がすような恋をしたことがある。ま、幼い頃の勝手に美化されている片思いの記憶なんだけど。
小学4年生の頃、親の仕事の都合で住んでいた街を引っ越すことになり、結局想いを伝えることさえできなかったけど、隣の席の木崎くんとの思い出は私の記憶の中で唯一、キラキラした宝物だ。
…なんて、またそんな思い出を引っ張り出して私ったら!
えっ…!
なんだろう…。今、なんだかすごく懐かしい感覚がした。
ーーあれから、あの場所を通るたびに、なんだか懐かしい思い出が蘇る。
小学校4年生。わたしが引越しをする前日のこと。放課後の教室で木崎くんがわたしに手紙をくれて、読もうとしたら直前で、顔を真っ赤にして慌てた様子の木崎くんに取り上げられて、明日の朝、家まで渡しに行くって言ってくれたんだよね。
結局、親の都合で前日の夜に街を出ることになってしまって、約束をした「次の日の朝」は私たちには訪れなかった。
木崎くん、あの手紙には何が書いてあったの…?
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俺の名前は木崎陸斗。湘政大学に通う20歳。ごくごく平凡な学生だ。
俺には、ずっと後悔したまま時が止まっている幼い頃の思い出がある。この話をすると、決まって女々しい奴だとからかわれたから、今では自分の胸の中だけに秘めている初恋の思い出だ。もう10年も前のこと、当時の自分でさえ、ここまで長い間引きずるなんて想像もつかなかった。
小学4年生の頃、隣の席の葵に恋をした。キッカケは隣の席になったことなのかもしれないけど、その頃の自分は毎日毎日葵のことばかり考えていた。
あの日、渡せなかった手紙。ずっとずっと後悔したままの自分。
「今度、会えたときに渡そう」行き先も知らないくせに、現実を受け止めることができなくて、楽観的にそんなことを思ったんだ。10年経った今でも、少し色あせた手紙を持っている自分って…(笑)。
「忘れられなかった」と言っても、忘れたかったという気持ちが強かった。初恋なんて叶わないことが普通だし、いつまでも引きずっている自分が嫌いだったから。
高校1年生の時、初めて付き合った彼女がいた。でも、結局いつも考えてしまうのは、あの日の後悔と、あと、葵の笑った顔ばかり。彼女にもそんな上の空な俺の気持ちが伝わったのか、2ヶ月で別れた。
「はぁ〜、俺はいつまでもこんなウジウジウジウジ…」
あの日、どうして手紙をちゃんと渡せなかったんだろう。あの日の朝、全速力で自転車を漕いだのに…どうして間に合えなかったんだよ…俺のバカ。
葵、いつもシャンプーの良い匂いがしたな…。そう、こんな。
えっ…。今、なんだかすごく懐かしい匂いがした。
あの日以来、
僕は
私は
何かを期待して、この道を通る。
あの日、感じた懐かしい匂いに引き寄せられるように…。
ピコーン
『ユウキさんとすれ違いました』
「はぁ〜、また通知」
女子会でオススメされて入れてみたクロスミーというアプリ。すれ違いを恋のキッカケに変えてくれるらしいのだけど、今の私が過去を引きずったままでイマイチ恋愛モードになれないんだよなぁ…。
ん?
ちゃんと気づいていなかったけど、ただいつも通りの生活をしているだけで、こんなに同世代の人とすれ違っているんだなぁ。
あ、この人。もう20回も同じ場所ですれ違ってる…!
なんだか、木崎くんの面影がある…。って、私どんだけ初恋を引きずってんだよ! そんな偶然あるわけないじゃーん…。少女漫画の読みすぎかも。
ピコーン
また通知か…。同じ学部の友達に便乗して入れてみたけど、そもそも俺って恋愛する前に過去を忘れるのが先っていうか…ん?
なんか、やたらすれ違ってる人がいんな… 。この場所だと同じ大学ってわけでもなさそうだし、知り合いでもなさそう…だな。
ピコーン
ピコーン
ピコーン
ピコーン
——やっぱり。
この場所だ。
今日——
会ったら、話しかけてみるんだ。
会えたら、話してみたいな。
ピコーン
「葵…だよね、?」
「木崎くん…久しぶりだね」
「これあの時渡せなかった手紙。ずっと持ってたんだ。よかったら受け取ってくれないかな…気持ちはずっと変わってないから。」
『葵いのことが好きです。遠くに行っても葵のこと忘れないからね。ずっと好きだよ』
「嬉しい。もっと早く知りたかったな。あ、ここの葵って字間違ってるよ?」
「うわ、本当だ(笑)。恥ずかし〜!」
「・・・私も今、この気持ちと一緒だよ。
ずっと好きでした。」
「え? 嘘でしょ?」
「なんで今嘘言うの? 本当だよ」
「やばい。すげー嬉しい。こんなことある? 俺たち、ずっとすれ違ってただけだったんだね」
「あのね、木崎くんに話したいこといっぱいあるんだ!」
「俺も!」
『「あのね!」』
10年分の積もる話をゆっくりしよう。
ーーすれ違いから、あなたの過去が再び色付くかも?
すれ違いを恋のきかっけにするアプリ「CROSS ME(クロスミー)」
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■公式サイト
https://crossme.jp/
※ストーリーには一部実際のアプリ仕様とは異なる部分がございます
■撮影
テラウチギョウ