LGBTという言葉を聞いたことがありますか?
LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの4つの言葉の頭文字を合せている言葉で、20人に1人いると言われているんだ。
昨日のインタビュー前編に続き、本日10月11日は〝カミングアウトデー″ということで、MTRLは現在、自らがゲイであるというセクシュアリティ(性のあり方)をオープンにし、歌人として活動されている鈴掛 真さんにLGBTのこと、カミングアウトのことについてインタビューに行ってきました!
鈴掛さんは毎日Twitterで短歌を更新しているMTRL読者にとっても身近な存在。今日この言葉を初めて知った人も、ゲイやレズというセクシュアリティくらいは聞いたことあったかな? まずは知るという一歩を踏み出し始めた君に読んでみてほしい! 少しだけ長いけど、大切なこと。
MTRL(以下 M):カミングアウトはするべきだと思いますか?
鈴掛 真(以下 鈴掛):結論としては、その人それぞれで決めたほうがいいと思いますけど、すごく大切な話だと思います。うちの親は結構楽観的な人で受け入れてくれているんですが、やっぱり縁を切られたり、精神病院に連れていかれたりとか、そうじゃない話もよく聞くので。
別に一人で生きていくのであればカミングアウトしなくていいんですよ。でも社会やコミュニティがあって、少なからず他人を巻き込むものだから。僕の場合は、それで友達や家族が離れていったとしてもしょうがないって受け入れる準備ができていたので。セクシュアル・マイノリティの子たちに相談されたときは、迷っているならしないほうがいいよって言っています。その人との関係は二度と戻せないものだから。
M:親にカミングするのに理想的なタイミングってありますか? 成人前とか成人後とか。
鈴掛:それはないですけど、迷いみたいなのって絶対伝わるんですよね。それはセクシュアリティのことだけじゃなくて、進学や就職のような他の悩みもそうですけど、迷っているタイミングで相談すると、お前本当にそれでいいのか?みたいな。自分にビジョンや決断がみえているのかって、親はすごく感じ取るから。でも自分の中でクリアになっていて胸を張って言えるような心もちになれているんだったら、年齢とかタイミングはそんなに関係ないと思います。
M:確かに迷いながらの決断と自信をもった決断なら、結局後から言い訳がましくなるのは前者ですよね。
鈴掛:はい。でも本当はもっと理想を言うと、自分の中で疑問をもっている段階で親に相談ができたらいいなと思うんですよね。当時の僕でいうと、幼稚園とか中学校で男の子好きになっちゃったんだけど、どうしよう?みたいにカジュアルな話が家族の中でできるならそれが一番理想だと思いますけどね。でもそんな時代が来るのはものすごく先の話だと思うし、同性愛の感情をもつことが異常だって、その人自身が感じていることだと思うから。そう思わなければ、すごくカジュアルに人に相談にできるけど。
鈴掛:仲良かったLGBTの友達との距離ができました。僕と一緒に行動しているとバレちゃうんですよ。やっぱりクローズの人たちはクローズでコミュニティをつくるわけですね。だけど本を出したことによって僕がクローズのコミュニティから出ちゃったわけで。それは全然想定していなかったことだったので、ショックだったし本当に悩みました。
カミングアウトすることが多少なりとも社会のためになると思っていたので。(みんなの代表をしているとかは全く思っていないですが)いいことをしてるつもりだったのに、それをLGBT側から、非難とまではいわないけど、今まで仲良くしてくれた子たちが離れるとは予想してなかったからツラかったですね。でもそうしても友達でいてくれる人たちが本当の友達と僕は思っているから、友達関係は結構淘汰されたかもしれないです。
M:クローズのときに広く浅くだった関係も、オープンにすることで本当の友達が見えてきたんですね。
鈴掛:でも実は、世の中には一生をかけてクローズを守り続けなければならない人たちもいるんですよね。例えば仕事柄とか、必ず結婚をしなければいけない由緒正しい家柄とかで。この間、その人たちの貴重な意見を聞ける機会があって、今LGBTが話題になっていること自体が、すごくヒヤヒヤすると言っていました。「取りざたしてくれるな」みたいな。
社会に絶対オープンにできないのに、メディアで話題にされていることで自分がバレてしまう危険度があがるんですよね。その意見を聞いたときに、自分がやっていることが少し分からなくなってしまいました。友達が離れたこともそうだし、どれだけ理解が進んでも隠し続けなきゃいけない人たちもいて。世間の今の流れをいいものとして受け取っていないっていうのは、全然想定していいなかったことだから、そういう意見もあるし、そういう人たちもいるのかって思って。それをどうしたらいいのって。
M:それは僕らも見えてなかったところですね。でもそうですよね、いろいろな人がいるから。LBGTサイドにしても意見が一致しているわけではないですもんね。
鈴掛:どういう社会になろうが、オープンにできない人たちには結局できないのかなって。何が答えなのか最近分からなくなってきましたね(笑)。
M:正解がないことのほうが世の中多いし、難しいですよね。
鈴掛:僕が俯瞰でみたときのざっくりとした把握では、LGBTの人たちが両手いっぱいにいたとしたら、カミングアウトしてオープンにできている人たちってほんの小指のツメの先くらい。
M:そんなに少ないんですか?
鈴掛:ざっくりとですけどね。 僕自身の考えとしては、オープンにできる人が広がっていけばいいんですけど、こういう活動に対してよく思っていない人は絶対いて、クローズでいたいのに取り沙汰すなって人たちは絶対いるので、今後どうなっていくかは分からないですね。
M:確かにそうですね。社会はもっとオープンなほうに進むのは確かだと思いますけど、みんなの認識が変わっていくのか、それともこのままでいくのかっていうところだと思いますね。
M:これセクシュアル・マイノリティの方に限らず言えることなんですが、自分のことを好きになるためにはどうしたらいいですか?
鈴掛:それはとても難しいな。僕こんな風にやってますけど、自分のことが好きだって言えないんですよね。僕も知りたいな。自分をサラミみたく細かく切って並べたら、ここは部分的に好きだけど、っていう「好き」はありますけどね。
M:ちょっとメンヘラですね(笑)。
鈴掛:そうそう、暗いんですよ(笑)。
一同:(笑)
鈴:自分のことあんま好きじゃないって思っちゃう。でもその発言もいけない気がするな。呪文のように「好き」って言っていかなきゃいけないですよね。
M:でもそれがリアルならいいっていうか、好きになることを諦めてないじゃないですか。だったらいいんじゃないかなって。嫌いで終わらせないことが大事だと思います。
鈴掛:そうですね。好きにはなりたいから。あと、こういう仕事をしていると、やっぱり仕事は人が持ってくるものだから、迷いながらやっている人に仕事を振りたくないじゃないですか。だから作家としてやっている以上は、どんどん自分を好きになっていかなきゃいけないとは思いますね。
鈴掛:日本で同性婚ができたらいいなと。パートナーシップ制度はすごく画期的で、よい制度ができたなとは思いつつも、まだまだイコール結婚ではないと思うから。特別枠ができたことはいいと思うけど、それが特別じゃなくなる日がきてほしいなとは思いますね。それがあったら僕も結婚したいなって初めてそこで思う気がします。
M:結婚願望はあるんですね。
鈴掛:はい。僕、ほのぼのしたすごく普通な家庭で育ったんですよ。兄と姉がいるんですが、恋愛関係もオープンな家庭だったのに僕だけがそれをできなかったんですよね。一般的な家庭で育ったくせに、一般的じゃない子供が生まれちゃったから、自分自身コンプレックスだし憧れはあります。今も両親のことはすごく大好きだし、親がやってくれたことだったら自分もやりたいよなって。
M:なるほど。それが実現するためにというか、今後、世の中で偏見がなくなるような取り組みって実は何もしないことなのかもと思う部分があります。なんか、そういうことをすることで、逆に普通じゃなくなっちゃいませんか?
鈴掛:本当にそう思います! 僕この前Twitterで16,000リツイートされたつぶやきがあるんですよ。その内容は何かっていうと、某テレビ局からLGBTに関する番組をつくりたいので話を聞かせて下さいっていうので取材依頼をもらったんです。来てくださった担当の方は女性だったんだけど、ちょっと構えてらっしゃったんですよね。「すごく苦しんで生活されてるであろう、いろんな葛藤が今でもあるんだろう」っていう感じが伝わってきて。
でも僕、見ての通りすごくヘラヘラしてるし(笑)。僕と接して話しをする内に、彼女の中で革命が起こったらしくて、インタビューの最後に「LGBTでくくって番組をつくること自体なんか違う気がしてきました」って言われました。僕、それがすごく嬉しかったんですよ。たぶん福祉系のお涙ちょうだいの番組をつくろうとされていたと思うんですけど、その必要がないってことを僕との話で分かってくれたっていうのがすごくよかったなと思って。今はLGBTが話題になっているし、そういう企画がでてくるのもすごくよく分かるし、認識を深めるっていうのはあるけど、数年後にはストレートのフリ自体意味なくない?って時代がきてほしいです。
M:ひとつずつかみ砕いてみてみると、みんなと同じ悩みですもんね。
鈴掛:はい。今、LGBTの人って20人に1人と言われているけれど、同じクラスにいるかもしれないし、お店で隣のテーブルになった人がそういう可能性だって全然あるってことをみんなが当たり前に意識していれば、特別な取り組みなんて必要ないと思います。
M:ありがとうございました。
今回のインタビューを通し、”LGBT”とメディアは一括りにしがちだが、彼らの中にも考え方や意見の違いがあり、制度や法が進歩していくことが本当の理解につながるわけではないことが分かった。彼らが望むものは、誰もが望む一般的なことであり、そこに特別な取り組みはいらない。教育の中で、”ジェンダー”とは我々に偏った”普通”を与えてきたのではないかと疑問を持った。特別なものはいらない、ストレートでもLGBTでも分け隔てない手続きや対応が初めて”普通”と呼べるのだろう。
インタビュー前編はコチラ!▼
【鈴掛 真インタビュー前編】「カミングアウトはコミュニティを脱してようやくできた」
1986年2月28日生。愛知県春日井市出身、東京都在住。短歌結社「短歌人」所属。大学卒業後、広告会社でコピーライターとして勤務。東京で社会人生活をスタートさせるも、3年で退職し作家業への道へ進む。「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」をセオリーに執筆。現在、月刊雑誌『Tokyo graffiti(東京グラフィティ)』にて「鈴掛真の恋の歌」連載中。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。
公式HP:http://suzukakeshin.com
Twitter:@suzukakeshin