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カツセマサヒコ連載『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』第9回

カツセマサヒコ連載『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』第9回

Views 26 February 2016 (更新日:
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こんにちは、カツセマサヒコです。

早いもので、もう2月も終わりですね。1年も6分の1が経過しようとしていますし、そろそろ企業の若手社員は、忘年会の予約を始めた方がいいかもしれません。

今年30歳になる僕ですが、最近は「もしもタイムマシンが手に入ったら、22歳くらいに戻りたい」と思うようになりました。なぜならそれぐらいの年齢が、いちばん年上OLに好かれるのではないかと、『きょうは会社休みます。』(集英社)を読んで思ったからです。

ヒモ。
なんと温和で美しい響きなのでしょうか。

一日をだらだらと過ごし、ただ労働してくれる彼女を癒すことにだけ集中していれば、過不足なく得られる経済的自由と時間的自由。今回はヒモに憧れを抱く僕が、もしも大学4年あたりに戻って、年上OLの家に居候することになったらどうなるか、考えてみたいと思います。

Vol.9 もしも僕が年上OLのヒモになったら

まず、22歳男子をヒモにするような年上OLは、絶対にオフィスカジュアルで通勤してると思います。ちょっと堅めな得意先のときだけジャケットを着ていて、でもインナーはカットソー。

そんな深田恭子似のOLが僕をヒモにしていたら、きっと会社を出た瞬間にLINEしてくると思うんですよね。

「つかれたあああもうダメだあああぎゅーをくれえええええ」

僕はいつも通りのLINEにクスッと笑ってから、そっとこう返します。

「おつかれさま。お風呂沸いてるし、あと、ぎゅーも待ってるよ」

(今のでちょっとイラっとした方は、もう読まないほうがいいかもしれないです)

そのLINEのやりとりから、ちょうど50分後。
田園都市線か、東横線か、丸の内線あたりの電車に乗って帰ってきた彼女(7センチヒール)は、家のチャイムを押すなり、「疲れた」と「ぎゅーくれ」を、リズムゲームのごとく連続して繰り出してきます。僕はやさしめにハグをしながら「おかえり」と伝えます。

僕「おかえり」

彼女「ただいまぁ~…」

僕「おつかれさま」

彼女「よしよしは?」

僕「よしよし(ニコッ)」

彼女「えへへ」

もう書いててバカバカしくなってくるのですが、こんな感じで平日の19時前を過ごすのがヒモの日課です。

ちなみに補足情報ですが、ヒモ(22)になった僕の趣味は「観葉植物に水をあげること」になってるので、部屋のカウンターにはいくつかの小さなサボテンとかそういうやつが並んでいます。

この日の夕飯は、僕が作ったビーフストロガノフなのですが、僕が紺色でちょっと丈が長めのエプロンを付けてキッチンに立っている間、彼女はダイニングテーブルでビールを飲みながら、仕事の愚痴を吐き出します。

「ほんっとにハゲ部長が使えないの! ぜんぜんこっちの話クライアントに伝えてくれないし! しかも絶対わたしがやるべきじゃない仕事もガンガン回ってくるんだよ!? ほんとおかしいと思うアレ!」

僕はこの時間が一日でちょっとだけ憂鬱なのですが、でも彼女にとっては大事な時間なので、笑顔で受け答えをします。

「またハゲ部長さんかあ~。本当に毎日ひどいよね。こんなにがんばってるのにね?」

「でしょ!? ほんとがんばってるのにさあ~!」

愚痴をひととおり聞き終えて、夕飯の用意ができると、僕らは「ビーフストロガノフって、なんか強そうじゃない?」という議題で盛り上がりながらそれをたいらげ、いつもよりちょっと熱めのお風呂にそれぞれゆっくり入ります。(ちなみに彼女の髪をドライヤーで乾かすのは、言うまでもなくヒモの仕事です)

お風呂に入ったあとは、ふたりでソファに座って、録画していたドラマを見ます。彼女はいちいち「このひとキライ」とか「まじかわいいな……」とかコメントを残すので、そのたびに僕は「うん」「そうだね」と笑顔で相槌を打ち、でこちゅー(※おでこに接吻をすること)をします。

ドラマを見終わった後は就寝。「毎日8時間寝たい」という彼女の要望を守るため、必ず23時にはベッドに入ります。ベッドでは彼女が「土日にやりたいこと」と「夏休みにやりたいこと」を挙げるので、僕はそれを実現できるかどうか考えることに徹します。その話が終わると、「体位は変えても2回まで」ぐらいのやさしいセックスをして(このときだけ彼女が年上のお姉さん感を出してくれるのマジで最高)、眠りにつきます。

翌朝はiPhoneのアラームを7つかけても全て無視する彼女を、遅刻しないギリギリの範囲で起こし、コーヒーとトーストを頬張らせ、やや強引に見送り、そのあと観葉植物に水をあげて、僕の慌ただしい一日がおわります。

(ちなみにこの働きによって、毎月口座に40万円振り込まれています)

以上が、年上OLのヒモになった場合の僕でした。
タイムマシンができた際には、ぜひお声掛けいただければと思います。

それでは、今回はこのへんで。第10回でお会いしましょう。
みなさんが明日もちょっぴりえっちですてきな青春時代を過ごせますように。

 

連載アーカイブ
【カツセマサヒコ連載】第1回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第2回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第3回「大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第4回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第5回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第6回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第7回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第8回『大切じゃないことは全てポエムが教えてくれた』
【カツセマサヒコ連載】第10回『もしも僕が大学入学初日で恋に落ちたら』
【カツセマサヒコ連載】第11回『もしもディ○ニーデートでえっちなことしたら』

 

【タイムラインの王子様】#カツセマサヒコ に憧れて


ライタープロフィール

カツセマサヒコ

下北沢の編集プロダクション・プレスラボのライター/編集者。

1986年東京生まれ。明治大学を卒業後、2009年より大手印刷会社の総務部にて勤務。趣味でブログを書いていたところをプレスラボに拾われ、2014年7月より現職。
趣味はtwitterでのふぁぼ集めとスマホの充電。


■Twitter

https://twitter.com/katsuse_m

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